◆━2002/10/30 第0005号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<投稿記事>
◆「根性のある出版翻訳者がいない」
<書籍紹介>
◆『翻訳とは何か―職業としての翻訳』山岡
洋一(著)
<編集後記>
◆「翻訳家、山岡洋一さんに会ってきました」
<投稿原稿募集要項>
◆「あなたの意見を投稿してみませんか」
<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「根性のある出版翻訳者がいない」
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いまにも雨が降ってきそうなある日、私は出版翻訳業界の現状を探るべくある出版
翻訳家の事務所を尋ねた。都心からすこし外れた古いマンションの一室にその翻訳家
の事務所はひっそりとあった。事務所の主は経済・金融・経営分野を専門とする専業
出版翻訳家、山岡洋一氏。
山岡氏は経済・金融・経営分野を中心に出版翻訳、産業翻訳に携わる1949年生
まれの翻訳家で『ビジョナリー・カンパニー』、『資本主義の未来』など数多くのベ
ストセラー翻訳書を持っている。昨年、自ら『翻訳とは何か―職業としての翻訳』を
出し、今年7月には読者、翻訳者、出版編集者を結ぶ『翻訳通信』を始めるなど、異
彩を放つ出版翻訳家だ。
事務所に集まっていたのはフリーランスの翻訳者、翻訳家志望者など。すべて『翻
訳通信』を購読している読者。それもそのはず、今回の集まりは『翻訳通信』にだけ
告知された懇親会だからだ。第一線の出版翻訳家に会えるとだけあって参加希望者が
殺到。定員を上回る参加希望者があったものの事務所の広さなどを考慮して11名の
読者に絞られた。
懇親会への参加者出席率は100%、参加を許可された11名全員が出席した。イ
ンターネットを使った勉強会を何度か開催したことがあるが、出席率100%は驚異
的だ。必ず「急用ができた」、「忘れていた」などと言って欠席する輩が一人くらい
はいる。だから全員出席にはちょっと驚いた。
さて、懇親会のテーマは「職業としての出版翻訳」。山岡氏を囲んで始まった会は
二次会を含めて7時間にも及んだ。議題は翻訳者の姿勢、英文和訳と翻訳の違い、出
版社と翻訳者の関係、翻訳者の語学力、翻訳会社の営業、機械翻訳の未来、翻訳専門
領域の確立などに広がっていった。
山岡氏は「出版社が出したい翻訳書はいくらであるのに安心して任せられる人(翻
訳者)がいない」という。実際、事務所にやってくる翻訳家志望者のうち10人中9
人は「やめておいたほうがいい」と諭すという。やってくる翻訳家志望者の多くは「
原書を10分の1も読んでいない」、しかも「自信など持ってはいけないところ(語学
力)に自信を持って」しまっているという。
翻訳教育産業の発展とは逆に「翻訳の質」は明らかに下がっていると山岡氏はいう
。翻訳学校では「翻訳書を出したことのない人が翻訳を教え」、受講生は「語学力(
英語)を生かして」などという宣伝文句に踊らされていると。翻訳は「質の高い日本
語の文章を読み、一流の翻訳を盗んでまねすること」でしか学べないという。
翻訳家として向いているのはベテラン出版編集者でも知らない本を大量に読み込ん
でいる人、翻訳分野の知識が専門家と同等かそれ以上の専門知識を持っている人。自
分の専門分野なら何時間でも喋っていられる人。翻訳に対する熱意と強い意志、なに
より根性を持っている人でなければならないという。
「翻訳書を一冊でも出したことがある人(翻訳者)を調べたら1万人ほどいた。そ
の中で継続的に翻訳書を出し、(出版翻訳で)生計を立てている人は10人といない
」そうだ。出版不況のもと翻訳家に入る印税収入は減り、山岡氏のような翻訳家でさ
え生計を立てるがやっとのところだという。
翻訳は「学び伝えることである」と語る山岡氏からは強い危機感がひしひしと伝わ
ってきた。実力のある新人翻訳者が出てこない、育たない、何よりも翻訳の質が下が
っていることを誰よりも心配し、日本の行く末を真剣に考えているひとりの翻訳家が
そこにいた。
2002年7月から山岡氏が始めた『翻訳通信』、その冒頭には「120万人の読
書家と翻訳者、執筆者、編集者とを結び、翻訳と読書、文化、言葉の問題を幅広く考
える通信」という文言が必ず現れる。翻訳家、山岡洋一氏の「挑戦」がどのように出
版翻訳界を変えいくのか、いま目が離せない。(平岩
大樹=通訳翻訳館)
[通訳翻訳館サイトにも掲載されています]
◇記事掲載ページ
http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20021030.htm
<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇『翻訳とは何か―職業としての翻訳』
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【著者】山岡 洋一
【出版社】 日外アソシエーツ
【発刊年月】2001年8月27日
【本体価格】1,600円 (税抜き)
【ページ数】281p
【ISBN】 4816916830
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4816916830/ithouse-22
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翻訳教育産業は、翻訳に対して最終責任を負いたくないが、翻訳というあこがれの仕
事にかかわっていたいと考える人たちを大量に生みだしている。翻訳とは外国語を学
び伝える仕事である。
本文218pより抜粋
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著者は経済・金融・経営分野を中心に出版翻訳、産業翻訳に携わる1949年生ま
れの専業出版翻訳家。翻訳書に『ビジョナリー・カンパニー』、『資本主義の未来』
など数多くの翻訳実績があり、ベストセラーを継続的に生み出している数少ない出版
翻訳家である。
本書は第一線で活躍する専業の出版翻訳家が書き下した数少ない翻訳論であると同
時に翻訳教育産業が儲かるカラクリを暴露、その誇大なイメージ戦略に警鐘を鳴らす
書である。
特に第4章「翻訳の市場」では経済・金融・経営分野を専門とする著者の鋭い分析
が行われている。翻訳市場の特徴を説明しながら現状と問題点を指摘。いま起こって
いる問題点とは何か?。その原因とは何かを追求し明らかにしている。
<= 編集後記 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「翻訳家、山岡洋一さんに会ってきました」
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編集部のひらいわです。
出版翻訳家、山岡洋一さんに会ってきました。背が高く、ひょろとした山岡さんは
とても謙虚で気さくな方でした。「先生」と呼ばれることを嫌がり、何度も「先生は
よしてくれ〜」と。
投稿記事中に出てくる『翻訳通信』は有料会員制の媒体になる予定なのですが、当
面はテスト期間として無料で購読することができます。興味のある方は下記のホーム
ページアドレスから登録されるとよいでしょう。いままでのバックナンバーや掲示板
もあります。
『翻訳通信』
http://homepage3.nifty.com/hon-yaku/tsushin/index.html
<= 投稿募集 =>――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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「通訳翻訳ビジネスレポート」ではメディアが取り上げない通訳翻訳業界の現状を
取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
の資格は「通訳翻訳ビジネスレポート」の読者であればどなたでも応募いただけます
。
原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。
原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。
応募原稿体裁―「通訳」または「翻訳」をキーワードに政治・経済・文化などにつ
いてのあなたご自身のご意見を1行全角38字詰め、総字数1000字〜2000字(見出しを
含む)にまとめ、下記アドレスへお送りください。メールアドレスのみの匿名による
応募も受け付けますが会社名、氏名、メールアドレス、ホームページURLの表記を
ご希望の方は記入ください。
原稿の成否に関するお問い合わせ、及び成否の理由についてのお答えは一切できま
せんのでご承知おきください。お手数ですが、送信メールの件名には必ず「投稿」と
いう文言を記入してください。
随時募集いたしております、奮ってご応募ください。
投稿先メールアドレス:column@ithouse.net
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