◆━2004/02/27 第0021号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<投稿記事>
◆「儲かるのはだれか」平岩大樹(通訳翻訳館)
<書籍紹介>
◆『対談 日本語を考える』大野晋(編集)
◆『英語はいらない!?』鈴木孝夫(著)
◆『私の手が語る』本田宗一郎(著)
◆『ザ・ブランド』ナンシー・F・ケーン(著)
樫村志保(訳)
<編集後記>
◆「600年の時を刻む」平岩大樹(通訳翻訳館)
<投稿募集>
◆「あなたからの投稿を掲載します」
<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「儲かるのはだれか」
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スクール関連産業がにぎわっている。大手から小さな零細企業まで、あきれるほど
スクールビジネスが流行している。なぜスクール関連産業がにぎわうのか。それは翻
訳会社や通訳派遣会社の本業が儲からないからだ。経営の多角化じゃない。翻訳ビジ
ネスや通訳派遣だけではやっていけないのだ。
確固たる経営理念を持って本業に打ち込んでいる翻訳会社や通訳派遣会社は、スク
ールビジネスなんぞに手を出さない。本業をしっかりやってる。ビジネス環境はよく
ないが、生き残っていくだけの力と覚悟がある。一方、カネ儲けしか眼中になかった
ところは、焦り、混乱し、こぞってスクールビジネスに参入している。
「儲かる」、「稼げる」というキャッチコピーをばらまきながら、さかんに宣伝し
ている。悲しいかな、通訳と翻訳という仕事は儲かる仕事、稼げる仕事ではない。そ
んなに「儲かる」、「稼げる」というのなら、そうやって宣伝している会社や個人は
さぞかし儲けることができただろう。いまごろ、株式を上場できる大企業に成長して
いるか、大金持ちになっているはずだ。
だが、そんな企業はどこにもないし、通訳翻訳成金なんてのもいない。それどころ
か「儲かる」、「稼げる」などといって、さかんに宣伝しなければならないほど追い
詰められている。「儲かる」、「稼げる」のはスクール関連産業の方であって、本人
ではない。外国語という「特殊幻想効果」を使い「ドロ舟」を「豪華客船」のごとく
宣伝している。
「儲かる」、「稼げる」という甘い言葉で素人を誘い込み、「ちょろい仕事」だと
いってカネ儲けを企む。「儲からない」、「稼げない」、「生活できない」のが翻訳
者、通訳者の現実だ。使命と情熱をもった人だけしか生き残ることができない。「儲
かる」、「稼げる」などといって人心を惑わし、錯誤させ、儲けようとする。
この業界で信頼できるのは、厳しい競争に勝ち残った一流の翻訳家や通訳者だけだ
。スクール関連産業が発信する「幻想」にとりつかれている人は、厳しい競争に勝ち
残った翻訳家や通訳者の言葉を受け入れようとしない。「毒」だとか「良薬」とか何
とか言って、素直に感謝しない。それほどスクール関連産業が発信する「幻想」が蔓
延している。
翻訳会社や通訳派遣会社が「スクールでもやるか」といってスクール関連産業に進
出する背景には、これらの企業が担ってきた仲介機能が崩壊しはじめているからだ。
価格競争は激化し、翻訳会社や通訳派遣会社はさらに単価や時給をひき下げる。結果
として、実力と経験を持った翻訳者、通訳者は流出する。
流出した一部はインタ―ネットと携帯ツールを使って個人事業化し、さらに価格競
争を激化させる。せいぜい個人名と電話番号を電話帳に掲載するしかなかった頃、翻
訳会社や通訳派遣会社の仲介機能は非常によく機能した。しかし、インターネットや
各種携帯ツールが登場し、ヘタな翻訳会社や通訳派遣会社よりも個人の方が強くなっ
てしまった。
翻訳会社や通訳派遣会社といっても、数名の従業員しかいない零細企業ばかりだ。
個人事業者や副業組みとの価格競争が激化するなか、確固たる経営理念や使命を持っ
ていなければかんたんにつぶれる。スクールビジネスに参入するのはいいが、「儲か
る」、「稼げる」などといって「幻想」をばらまいても経営は安定しない。
それどころか、経営はますます悪化することになる。確固たる経営理念と使命を持
った翻訳会社や通訳派遣会社に負け、大手のスクールや私塾にも負ける。個人事業者
や副業組みとの価格競争にも負ける。企業の社会的使命を自覚せず、自らの哲学と正
しい経営理念を持たないところは、自らの手で自分の首を締めることになるだろう。
(平岩大樹=通訳翻訳館)
[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]
◇掲載記事
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◇いままでの記事一覧
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<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇『対談 日本語を考える』
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【編集】大野 晋
【出版社】中央公論新社
【発刊年月】1979年9月25日
【本体価格】781円 (税抜き)
【ページ数】231p
【ISBN】4122040086
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122040086/ithouse-22
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日本語は不明確な言語であるとか、いったい日本語には文法があるのかとか、とにか
く日本語というのはぐずぐずの言語なんだといったような、そういう意見なり感想な
りとうものはいまでもあると思う。しかし日本語がぐずぐずなのか、人がそれをぐず
ぐずに使っているのかということは、分けて考える必要があると思う。
本文56pより抜粋
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本書は日本語研究の重鎮、大野晋と作家、文学者、言語学者、哲学者ら8人の論客
とともに日本語について対談したもの。司馬遼太郎、丸谷才一、大森荘蔵と日本語で
考えるとはどういうことなのか、日本語の根幹にはどういう歴史が埋もれているのか
を探っている。
日本語の使われ方がどのように変化してきたのか、日本語の骨格はどのようにして
形成されてきたのかを議論し、人間にとって言葉とは何なのか、日本人にとって日本
語とは何なのかを追求していく。
日本語ということばの根本にある仕掛けがどのように動くのか、夏目漱石や森鴎外
がどのようにして現代日本語を確立したのか、彼らの文学作品に影響を与えたものは
何であったのかも明らかにされている。
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■◇『英語はいらない!?』
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【著者】鈴木 孝夫
【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2001年01月08日
【本体価格】660円 (税抜き)
【ページ数】207p
【ISBN】4569613195
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569613195/ithouse-22
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英語を話すことは特に必要のある人、それをやらなければメシが食えない人意外は必
要ないのです。そして、どうしても学んで使わなければいけない人にとっては、それ
は必要悪なのです。決して他人から見て、羨ましいこと、憧れるべきことではない。
本文124pより抜粋
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著者は1926年生まれの言語社会学者。本書は経済大国にっぽんが持つべき対外
言語・文化戦略をまとめたものである。逆肉強食の国際社会のなかで、日本人と日本
語はどうあるべきなのか、英語とどう向き合えばいいのかを語っている。
著者は英語という外国語を憧れの対象にしたり、英語のできる人を羨ましがるよう
な古い外国語観や伝統は捨てろという。時代遅れの馬鹿げた幻想であり、一般の日本
人にとっては損でしかないと指摘している。
外国を過度に美化し理想化するのではなく、いまこそ日本人が築き上げてきた日本
の歴史と先人たちの偉業に目をむけなければならないという。新しい日本のあり方と
はどうあるべきなのか、日本語はどうあるべきなのか、いまの日本に必要とされてい
る国家戦略を描きだしている。
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■◇『私の手が語る』
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【著者】本田 宗一郎
【出版社】講談社
【発刊年月】1985年02月15日
【本体価格】466円 (税抜き)
【ページ数】254p
【ISBN】4061834533
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061834533/ithouse-22
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変転きわまりない時代にあって、根本に変わらないものがひとつある。それは何かと
いうと、人の心というやつだ。飛躍したいい方になるが、思想であり、その根っこの
哲学である。しっかりした思想と哲学をもたぬ企業は、これから先もつぶれてゆくだ
ろう。
本文39pより抜粋
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本書は世界のホンダを生んだ本田宗一郎が書き残した自伝のなかの一冊。引退して
からはじめた絵、戦国時代の武具への興味、詰め込み式の学校教育への批判など、自
らが大切にしてきた思想と哲学を語っている。
しっかりした思想や哲学を持たず、うわべだけを飾ったり、ごまかしを使うような
商売や企業はつぶれていくとはっきり言っている。自らの哲学にもとづく創意をやめ
、安易な真似をする企業は転落と崩壊の道をたどるという。
宗一郎は「商売」は血のでない戦争だという。世の中が平和であっても、自由競争
のもと商売のきびしさは一層激しさを増すと予言し、だれもが認める思想、哲学、理
想をもって生きること、商売をすることが何よりも大切なのだと教えてくれる。
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■◇『ザ・ブランド』
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【著者】ナンシー・F・ケーン
【翻訳】樫村 志保
【出版社】翔泳社
【発刊年月】2001年11月13日
【本体価格】2500円 (税抜き)
【ページ数】509p
【ISBN】4798101451
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798101451/ithouse-22
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製造技術の高さだけでは、新しい会社を繁栄させることはできない。優れた製品を作
れるからといって、それだけでビジネスが成功した例はほとんどない。自社製品の価
値を潜在的な消費者に効果的に伝えることができなければ、企業の存続に必要な顧客
層を維持・拡大することはできなかったのである。
本文11pより抜粋
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著者はハーバード・ビジネス・スクール経営学部の教授。専門は歴史学で資本家の
発展と歴史的役割を研究している。本書はウェッジウッド、ハインツ、マーシャル・
フィールド、エスティ・ローダー、スターバックス、デルの6ブランドをとりあげ、
それぞれのブランド戦略がどのように実施されたのか検証している。
無名ブランドがどのようにして世界ブランドに育っていったのか。6ブランドを支
える企業文化、企業理念がどのような社会情勢、生活習慣、時代背景から生まれたの
か、歴史を紐解いて分析している。
ブランドを生み出した6人の起業家がどのような家庭環境で育ち、どのような状況
で商売をはじめたのか。商売の動機、創業時の資金難、倒産や失敗をへて飛躍的に成
長するきっかけとは何だったのか、ブランドはどのような役割を担っていたのかを明
らかにしている。
◇そのほかのオススメ選書をみる
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<= 編集後記 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「600年の時を刻む」
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1394年からはじまる氷川神社が、歩いて15分のところにある。610年の歴
史を誇るこの石神井氷川神社を訪れる人はあまりいない。黒光りした社が鎮座してい
るのみだ。
近くにいくつか神社があるが、この神社だけは桁はずれの威圧感を放っている。興
味をもってよく観察してみれば、江戸時代に奉納された石灯龍があり、天保8年(1
837年)から睨みきかせている狛犬もいる。
作り物、見てくればかりの娯楽施設がのさばり、数百年以上にわたる時の試練を超
え、地域住民を支えてきたさまざまな文化遺産が忘れられている。「楽しい」、「面
白い」を超えて受け継いでいかなければならない歴史と文化が、いたるところでない
がしろにされている。
この社が放つ威圧感は室町時代、江戸時代をへて現代に受け継がれる日本の歴史と
文化なのである。100年後、300年後、600年後の日本はどうなっているのだ
ろうか。そして、この社は未来の人々に何を語りかけるのか。空想の世界を散歩しな
がら、未来のことを考えてみた。
(平岩大樹=通訳翻訳館)
[編集後記は「館長室だより」として通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]
◇編集後記(館長室だより)
http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20040227.htm
◇いままでの編集後記一覧(館長室)
http://www.ithouse.net/japanese/director.htm
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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
の資格は「通訳翻訳ビジネスレポート」の読者であればどなたでも応募いただけます
。
原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。
原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。
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