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通訳翻訳ビジネスレポート No.53 2005/03/30 投稿:はがされた権威
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◆━2005/03/30 第0053号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「はがされた権威」平岩大樹(通訳翻訳館)

<書籍紹介>
 ◆『比較文化論の試み』山本七平(著)
 ◆『捕虜』パウル・カレル ギュンター・ベデカー(著) 畔上司(訳)

<館長室だより>
 ◆「ひろはあまな」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「はがされた権威」
■■………………………………………………………………………………………………

 「失われた十年」という言葉を使いたがる人間がいる。何度も何度も「失われた」
のだと訴えている。彼らとって、失われたのは「十年」ではない。彼らが失ったもの
は「権威」である。しかも、「失われた」のではなく「はがされた」のである。

 時代の裂け目か、新時代の入口か、それは観る人間の見方にすぎない。ある人間に
とっては「失われた時代」かもしれないし、ある人間にとっては「恵みの時代」かも
しれない。「解放の時代」だって悪くない、「挑戦の時代」だっていい。

 どこかの新聞で、雑誌で、本で「失われた時代」などと自信たっぷりに書いてある
からといって本当にそうなのかといえば、そんなことは証明のしようがない。百年後
の歴史家だって、証明のしようがない。十人の歴史家を集めたところで、せいぜい十
通りの見方が出てくるだけだ。

 自分で実際に観たこと、感じたことに優るものなど、この世に存在しない。自分が
観たこと、感じたこと、それを素直に受け入れ、表現し、行動すればいい。ところが
、それをやられては困る人間がいる。しかも「権威がある」などといっているところ
に、仮面をかぶってふんぞりかえっている。

 支配する側、権力を握っている側にしてみれば、一人ひとりの人間が観たこと、感
じたことを素直に表現し、行動されたら、支配しにくくなる。あらゆる不備、不正を
指摘され、組織や制度に改善と改良を加えねばならなくなる。そうなれば、支配者の
支配力、権力者の権力は、うす皮をはがされるように剥がされていく。

 支配者や権力者が、自らの支配力と権力を保持するために編み出したもの、それが
権威という「飾り物」である。この「飾り物」は、美しいもの、珍しいもの、手に入
りにくいもの、意味がわからないもの、理解できないもの、馬鹿げたものなど、時代
や文明によって多種多様なものが考案され、発明されている。

 古代文明では、金細工や希少鉱石で飾られた「冠」や「仮面」が権威の象徴として
、支配力と権力の源泉となっていたし、聖典、聖杯、聖剣などといった宗教がらみの
品々も、いまだに神聖化され、崇拝されている。

 日本の「飾り物」は香木や焼物だったこともある。金ぴかの仏像、巨大な仏像、み
んな「飾り物」の変り種である。つい最近まで、翻訳書はその「飾り物」の一つにな
っていた。

 明治の翻訳家、福沢諭吉は洋書から学べと説いたが、洋書そのものを「飾り物」に
しようとはしなかった。福沢ほどの翻訳家なら簡単にできたことである。だが、そう
しなかった。洋書を「飾り物」にしてしまえば、洋書から学べなくなる。なぜなら「
飾り物」は学ぶものではなく、拝むものだからだ。

 福沢は、それをよく知っていた。洋書を拝むものにしてしまえば、新たな支配者や
権力者に都合よく利用される。そうなれば、良薬でも毒薬になってしまう。だから、
新たな支配者や権力者にとって、福沢は邪魔者だった。当然、福沢は命を狙われた。

 福沢の死後、洋書は万民が学ぶものではなく、もっぱら支配者や権力者に都合よく
解釈され、思想統一のための道具となった。富国強兵を支えた思想は、西欧文化や西
欧知識を「人類普遍の公理」だと思い込ませたところで生まれた。洋書は「人類普遍
の公理」が書かれた「飾り物」となり、学ぶものではなくなったのである。

 いつしか、福沢の偉業は「啓蒙思想」という言葉で覆い隠され、ぼかされ、忘れら
れた。現在と過去を連結するはずの古典は死語で殺され、現在と過去は切り離され、
過去の代用に虚像と神話が接合された。この壮大な実験は、昭和初期の悲劇をもたら
し、敗戦という形で国家の破綻を招いた。

 教訓はこうだ。翻訳書を支配者や権力者の「飾り物」にさせてはならない。翻訳書
は、人間をひれ伏させ、従属させ、支配するための「飾り物」ではない。翻訳書を支
配者や権力者の「飾り物」にしておけば、ひと握りの支配者や権力者のために多くの
犠牲者がうまれる。

 虚像と神話は、人々に幸福と繁栄をもたらさない。言論は統制され、みせかけの権
威が跋扈し、アカデミズムという仮面をかぶった「ニセ学者」の温床ができあがるだ
けだ。いま、求められいるのは福沢の理念を受け継いだ翻訳家である。命をかけて翻
訳に取り組む翻訳家である。

(平岩大樹=通訳翻訳館)

 ◇平岩大樹
  1998年10月、「通訳翻訳館」の前身となった非営利求人求職サイト「個人
  翻訳通訳館」を立ち上げる。2000年に同サイトを「通訳翻訳館」に名称変更
  するとともに「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職サイトを始める。現在、通
  訳翻訳館の館長。http://www.ithouse.net


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20050330.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm

 ◇記事を投稿する
  http://www.ithouse.net/japanese/column/send.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇『比較文化論の試み』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】山本 七平
【出版社】講談社
【発刊年月】1976年06月30日
【本体価格】525円 (税込)
【ページ数】99p
【ISBN】4061580485
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4061580485.htm

──────────────────────────────────────
西欧であれわれわれであれ、一つの伝統的文化の結実の上に生きているのであって、
厳密にいえば、絶対に普遍化できない基本を共にもっているということです。簡単に
いえば、日本文化の結実を公理として他国に適応することもできないし、その逆もで
きない。
                           本文99pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は日本人の文化的規範がどのような歴史背景から生まれているのか、異文化と
の比較によって浮かび上がる日本人の文化的特異性を指摘したものである。日本人で
あれ、西欧人であれ、それぞれの文化には絶対に普遍化できない基本があると著者は
いう。

 明治以降、日本は西欧の伝統的文化から生み出された民主主義、合理主義を「人類
普遍の公理」であるかのごとく錯覚し、日本の伝統的文化から生み出される歴史観や
文化的規範を否定し、排除し続けてきたともいう。

 錯覚による日本文化の破壊は、結局のところ「敗戦」という国家破綻を招いた。異
文化で結実した文化体系を、彼らの歴史観や宗教観と切り離し、ひたすらそれに同化
しようとする試みは、自国文化を自滅させるだけなのだと書き残している。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『捕虜―誰も書かなかった第二次大戦ドイツ人虜囚の末路』
■■………………………………………………………………………………………………

【翻訳家】畔上 司
【著者】パウル・カレル ギュンター・ベデカー
【出版社】学習研究社
【発刊年月】2001年11月16日
【本体価格】3675円 (税込)
【ページ数】660p
【ISBN】4054014380
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4054014380.htm

──────────────────────────────────────
捕虜収容所にいた多くのドイツ人捕虜の政治姿勢から判明することは、第二次世界大
戦が戦車・弾薬・魚雷の戦であるばかりでなく、世界観の戦争、つまり信念の対立、
信念のための戦争でもあったという一事だ。つまりは現代版の宗教戦争だ。
                           本文234pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は第二次世界大戦において捕虜となったドイツ人将兵、連合軍将兵がたどった
運命、証言、記録をまとめたものである。ドイツ政府捕虜史委員会の公式記録および
、元捕虜とその家族から提供された情報、日記、写真、手紙、証言がもとになってい
る。

 敗戦により戦争捕虜となったドイツ人将兵1100万人。戦勝国となったイギリス
、オーストラリア、カナダ、スウェーデン、アメリカ、フランス、ソ連にばらまかれ
た戦争捕虜たち。国によって、捕虜収容所によって決まった人間の運命。

 人間の尊厳をすべて奪われた捕虜。家畜以下の扱いを受けた捕虜。憎悪と復讐のは
け口にされた捕虜。強制労働、奴隷労働、重労働のすえ精神異常となる捕虜。政治思
想の違い、宗教の違い、文化の違いによって増幅された暴力と残虐性。戦争のありの
ままの姿が、生存者によって書き残されている。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


<= 館長室だより =>―――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「ひろはあまな」
■■………………………………………………………………………………………………

 牧野記念庭園の「おおかんざくら」が咲きはじめた。いわゆる「早咲き桜」といわ
れる桜で、漢字の学名では「大寒桜」と書く。なるほど、漢字だと意味するところが
パッとわかる。寒さが厳しい時期に咲く桜というわけだ。

 庭園の中庭に入ってみると、ゆり科の「ひろはあまな」、きんぽうげ科の「ゆきわ
りいちげ」が可憐な花を咲かせている。それぞれ漢字の学名では「広葉甘菜」、「雪
割一華」という名前がついている。
 
 平仮名だと、どうしても意味が浮かばない。単なる文字の羅列に見えてしまう。と
ころが漢字だと意味が目の前に現われる。広い葉に甘い菜は「広葉甘菜」という感じ
だ。「甘」いから推測して食用か、漢方薬に使われいたのかもしれないなどとも思い
浮かぶ。

 雪を割った一つの華は、「雪割一華」。雪を割ったように白い華を咲かせている。
「華」という漢字を使っていることかもわかるように、日本的な花とはちょと違う。
「花」ではなく、やはり「華」なのだ。一文字に込められた先人たちの豊かな表現力
と想像力。それを感じる。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[館長室だよりは通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]

 ◇館長室だより(「おおかんざくら」などをデジカメで撮影しました)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20050321.htm

 ◇いままでの館長室だより一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
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