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通訳翻訳ビジネスレポート No.74 2005/12/22 投稿:翻訳出版の危機
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◆━2005/12/22 第0074号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「翻訳出版の危機」平岩大樹(通訳翻訳館)

<書籍紹介>
 ◆『日本の伝統』岡本太郎(著)

<館長室だより>
 ◆「内なる爆発」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「翻訳出版の危機」
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 危機という言葉がよく使われるようになった。国家財政の危機、国民健康保険の危
機、受信料制度の危機、人口減少の危機、石油枯渇の危機など。はっきりいって、危
機はいつもあるのだ。いま、はじまったことじゃない。

 これからも危機はなくならない。文明がはじまった時から危機はいつもある。危機
に挑み、危機を乗り越えることができなければ文明は滅びる。危機がなくなったとき
、それが本当の危機だ。

 新旧の対決は命がけだ。もし、新訳と旧訳が馴れ合い、仲良くお互いを褒めあって
いるなら、それはイカサマだ。新訳は旧訳を否定し、旧訳は新訳を否定する。もし、
新旧の対決で旧訳が残っているなら、それは新訳が旧訳を超えなかったという証拠だ


 ニセ新訳を出して既訳を売るというセコイ発想は、焼き直し、塗り直しをした既訳
を売っているだけでクズを増やしているにすぎない。イカサマ対決で騒ぎ立て、数売
って、印刷機を回すためなら、ニセ新訳でもトンデモ新訳でも何だっていい。そうい
う手口だ。

 新旧の対決は命がけだ。真の新訳は、旧訳の「死」を意味している。真の新訳が出
れば、もはや旧訳は必要ない。旧訳によって支えられ、つくりだされた権威、権力も
崩れ去る。真の新訳は新たな「つくられた権威」を生み出し、旧訳を地下書庫に葬り
去る。

 だから、「翻訳出版の危機」などと騒ぎはじめる人間が、もうすぐ現れる。いやい
や、もっとおおげさに「出版界の危機」などと言い出すことだろう。しかも、グロテ
スクな「死にかけの権威」をかさにきて。

 だれにとっての危機なのか、それは読者の側の危機ではない。それは権威、権力を
にぎっている側の危機、アカデミズムを支える権力構造の危機にほかならない。要は
「死にかけの権威」とつるんでいる出版社、出版人の危機なのだ。

 権威、権力をにぎってふんぞりかえっている人間の自己防衛など知ったことか。も
はや、読者は「読ませる者」ではない。「死にかけの権威」とつるんでいる出版社、
出版人にはみえていないのだ。読者が「毒者」に変わっていることを。

 読者をバカにし、読者をコケにした行いが、読者を「毒者」に変えた。いくら「出
版界の危機」などといっても、「毒者」には効かない。「死にかけの権威」とつるん
でいる出版社、出版人に教えよう。トヨタ自動車が10年前に使っていた広告コピー
は「セルシオのライバルはセルシオ」だ。

 あれから10年、オヤジ車だったトヨタは洗練され、強くなって世界の巨人になっ
た。そう、トヨタの敵はホンダでも日産でもなかった。トヨタの敵はトヨタだった。
自動車を権威づけしたらどうなるか。権威づけされた自動車なんてバカバカしいと思
うかもしれないが、実物が日本にあるのだ。それも皇室に。

 1967年に日産が開発した「プリンスロイヤル」がそれだ。「プリンスロイヤル
」は権威ある自動車であるがゆえにモデルチェンジできず、老朽化とメンテナンス部
品の調達不能に陥った。すでに、トヨタの新型「センチュリーロイヤル」が後継御料
車として決まっており、日産の「プリンスロイヤル」はその役割を終える。

 トヨタの新型「センチュリーロイヤル」が日産の「プリンスロイヤル」を打ち破っ
たかのようにみえるが、そうじゃない。「プリンスロイヤル」は「プリンスロイヤル
」に挑まなかった。「プリンスロイヤル」は「プリンスロイヤル」に敗れたのだ。

(平岩大樹=通訳翻訳館)

 ◇平岩大樹
  1998年10月、「通訳翻訳館」の前身となった求人求職サイト「個人翻訳通
  訳館」を立ち上げる。2000年に同サイトを「通訳翻訳館」に名称変更すると
  ともに「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職サイトを始める。2000年から
  通訳翻訳館の館長。http://www.ithouse.net/


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20051222.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm

 ◇記事を投稿する
  http://www.ithouse.net/japanese/column/send.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇『日本の伝統』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】岡本太郎
【出版社】光文社
【発刊年月】2005年05月15日
【本体価格】660円 (税込)
【ページ数】292p
【ISBN】4334783562
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4334783562.htm

──────────────────────────────────────
過去といっても、過ぎ去り、すべて終わってしまったものではない。自分の責任にお
いて創造的に見かえすべきモメントなのです。自分の全存在で挑み、新しくひらくも
のです。過去は自分が創るのです。ちょっと異様な発言に聞こえるかもしれませんが
。そのようにして瞬間々々に創られて行く過去だけが、生きて、伝統になるのだと私
は思っています。
                           本文284pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書はアカデミックな権威に支配されている「つなぎあわせの伝統」に対し、日本
人の日常生活に深く結びついた「生きた伝統」とは何なのか、そしてそれはどこから
生まれてくるものなのかを指摘したものである。

 トラディションの訳語としてつくられた「伝統」は、明治官僚によって権威づけさ
れ、国民に押しつけられたものでしかないと著者はいう。一般から切り離され、その
道の専門家や権威の側を守るための道具、自己防衛の道具として使われているのが「
つなぎあわせの伝統」なのだと。

 過去は死んだものであり、古典だろうが、国の宝だろうが、かんじんなのは現在を
生きている人間の心であって、過去ではない。形骸化した過去を容赦なく否定し、過
去から現在的な価値を引きだし、今日の生活に再生させることが「生きた伝統」を受
け継ぐ方法なのだと書き残している。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


<= 館長室だより =>―――――――――――――――――――――――――――――

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■◇「内なる爆発」
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 岡本太郎記念館にいってきた。渋谷駅から徒歩20分、途中に国連大学とか青山学
院大学などがあり、ケンゾーとか、ヒューゴボスなどの一流ブランドショップが点在
する都会のど真ん中に記念館はある。

 岡本太郎が生き、苦しみ、闘いながら一流の芸術作品を生み出したアトリエ、それ
が岡本太郎記念館として一般に公開されている。ここから「太陽の塔」、「悲しい動
物」、「縄文人」などの多くの芸術作品が生み出された。

 遺作となった未完の「雷神」があり、「幼神」、「男と女」、「犬の植木鉢」など
が展示されている。記念館の庭には彫刻、モニュメントなどの作品もあった。岡本太
郎の創作現場だったアトリエに入ったとき、ピリピリとした岡本太郎のエネルギーを
感じとった。絵の具のニオイじゃない、「何か」を。

 一流といわれる人物の創作現場には、なにかしら言葉では表現しにくい緊張感とい
うか独特の空気が漂っている。岡本太郎が残したアトリエにも、この言葉では表現し
にくい緊張感と空気が残っていた。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[館長室だよりは通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇館長室だより(「岡本太郎のアトリエ」などをデジカメで撮影しました)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20051217.htm

 ◇いままでの館長室だより一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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