BackNumber
通訳翻訳館
マガジン概要 マガジン登録 マガジン解除 マガジン見本 よくある質問 登録数状況 登録者属性


■通訳/翻訳のお仕事発見! No.69 05/26 投稿紹介:支配のための日本語
Mag2 Logo
通訳/翻訳のお仕事発見!』メールマガジンで新着情報をお届けします(登録無料)


□━2005/05/26 第0069号━━━━━━━━━━━━━━━━━━読者数10368部━□

◇◇通訳/翻訳のお仕事発見!◇◇
http://www.ithouse.net/
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■◇投稿記事の紹介
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

I┃N┃D┃E┃X┃

▼「支配のための日本語」平岩大樹(通訳翻訳館)

■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■◇「支配のための日本語」
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 納税者の長者番付が話題にのぼった。2004年、日本での納税額が一番多かった
人が、「サラリーマン」だというから話題性もあった。ただ今回、「サラリーマン」
という言葉を聞いていて、語感のズレを感じた。

 「サラリーマン」でも、「フリーター」でも、「ニート」でも、「エコンザミン」
でも共通して持っている言葉の性質がある。その性質とは「空(から)」だという性
質だ。「サラリーマン」という言葉は、それなりに意味づけされ、マスメディアでも
頻繁に使われるから、ちゃんとした意味のある言葉だと思われている。

 ところが、百億円もの給与所得がある会社員を「サラリーマン」と表現しただけで
、語感のズレがオモテに現われる。なぜなら、「サラリーマン」という言葉では、こ
の会社員のような巨額給与所得者のことを表現しきれないばかりか、とらえきれない
からだ。

 この語感のズレに着目し、週刊誌や新聞紙あたりで「スーパーサラリーマン」だと
か、「勝ち組みサラリーマン」だとかなんとかいってベラベラ解説しはじめる人間が
そのうち現われるはずで、たいていアカデミズムという「上界」からマスメディアと
いう「下界」に下ってくる。

 いくら現代語用語辞典で「新造語」を整理分類しても、語感のズレは解消しない。
。「間違った日本語」などといってみても、「誰が」間違ったと判断し、その決定は
「誰が」するのか、なぜそうすることができるのかをよくよく観察していけば、最後
に「権威」という言葉に行き着く。

 現代日本語というものを、その生成時点までさかのぼり、現在と過去を連結してみ
ると、「間違った日本語」などといっている人間は、いったいどういう意図をもって
「間違った」と発信しているのか、その真の目的を見抜くことができる。

 柳父章はその著書『近代日本語の思想』のなかで、こう指摘している。

  日本語の文章といえば、その一つの典型的な形として、「〜は」で始まって、「
  ……た」や、「……である」で終わり、そのあとに句点「。」を打つというような
  形を、人々は思い浮かべるのではないか。それは「文」という単位として、今日の
  日本語を書く人の常識になっているだろう。ところが、今から百年ほど前には、日
  本語には、そんな形はなかったのである。そういう形は、ほとんどすべて、西洋語
  の 翻訳の結果として、人為的につくられていったのである。(66p)

 つまり、現代日本語というものは、人為的につくられた文章体であり、翻訳文体、
翻訳造語を組み合わせた人造文体、人造語なのだと柳父はいう。

 別の著書『「ゴッド」は神か上帝か』では、現代日本語の不完全性をも指摘する。

  文体を軽視した翻訳文は、当然のことながら人に訴える魅力が乏しいであろう。
  これは現代日本語の宿命とも言うべき問題なのだが、私たちの現代口語体とは、完
  成されたものではない。まだ完成途上にある文章体なのだ、という視点が必要では
  ないか、ということをここで言っておきたいと思う。(161p)
    
  要するに、現代日本語というものは「穴だらけ」の未完成語で、いくらでも改善改
良することができるのだと。

 古代や中世ならいざしらず、現代日本語は一部の権力者や支配者のものではないし
、アカデミズムのものでもない。教育者のものでもなければ教師のものでもない。ま
してや、文法書をつくった死人のものでもない。

 言葉には、目に見えない強力な支配力がある。敗戦から60年、戦没者は「あれよ
、あれよという間に戦争にのみ込まれ」、いつのまにか「必勝玉砕」を叫びながら散
っていった。けっして、目には見えない言葉の支配力。それが、「必勝玉砕」の言葉
のなかにも組み込まれていた。

 現代日本語は、「必勝玉砕」のような「支配のための日本語」であってはならない
し、これから翻訳によってつくられる新しい日本語も、「支配のための日本語」であ
ってはならない。

 「間違った日本語」を意図的につくりだし、「正しい日本語とは」などといって自
らを権威づけしようとする人間。文法書を「聖典」であるかのように天にかざし、人
々を従属させ、支配しようとする人間。「間違った日本語」や「正しい日本語」とい
う思想のなかにも「支配のための日本語」が潜んでいる。

(平岩大樹=通訳翻訳館)

 ◇平岩大樹
   1998年10月、「通訳翻訳館」の前身となった非営利求人求職サイト「個人
   翻訳通訳館」を立ち上げる。2000年に同サイトを「通訳翻訳館」に名称変更
   するとともに「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職サイトを始める。現在、通
   訳翻訳館の館長。http://www.ithouse.net

[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
   http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20050525.htm

 ◇いままでの記事一覧
   http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm

 ◇記事を投稿する
   http://www.ithouse.net/japanese/column/send.htm

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
◆発行者:ウッドロック 通訳翻訳館
〒1770035 東京都練馬区南田中4丁目26番地11号
◆ホームページ
http://www.ithouse.net/
◆メルマガ新規登録
http://www.ithouse.net/japanese/mm/registration.htm
◆メルマガ配信停止
http://www.ithouse.net/japanese/mm/remove.htm
◆求人情報の掲載はこちら
http://www.ithouse.net/japanese/ad_want/index.htm

……………………………通訳翻訳館が発行するメルマガ……………………………

「通訳翻訳サービス提供者発見!」-通訳翻訳サービス提供者プロフィール情報-
http://www.ithouse.net/japanese/mmw/registration.htm
「通訳翻訳ビジネスレポート」-独自の視点で通訳翻訳ビジネスを探る-
http://www.ithouse.net/japanese/mmn/registration.htm
「翻訳家で選ぶビジネス翻訳書」-ビジネス翻訳書の紹介メルマガ-
http://www.ithouse.net/japanese/mmt/registration.htm

mag2
ID:0000019497
melma
ID:00011834
melma
ID:00151422
カプライト
ID:6173

★上記のメールマガジン発行システムを利用して発行しています。
★配信解除依頼は受け付けておりません。解除はご自身でお願い致します。
★記事および内容をいかなる形式であれ許可なく転載することを禁じます。
★Copyright (c) 2005 ウッドロック 通訳翻訳館 All Rights Reserved.
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


通訳/翻訳のお仕事発見!』メールマガジンで新着情報をお届けします(登録無料)

Powered byまぐまぐ
記事一覧




マガジン概要 マガジン登録 マガジン解除 マガジン見本 よくある質問 登録数状況 登録者属性



You are here > Home > メルマガ > 通訳/翻訳のお仕事発見! > マガジン見本 >2005/05/26配信

通訳翻訳館


ホーム新着求人通訳求人翻訳求人求人掲載メルマガコラムブログTwitter館長室広告免責運営
通訳/翻訳のお仕事発見!通訳翻訳サービス提供者発見!通訳翻訳ビジネスレポート翻訳家で選ぶビジネス翻訳書
フリーランスの書架ビジネスセンスを磨く本独立開業のための本仕事獲得のための本キャリアデザインの本
プロフェッショナルの書架通訳者が書いた本翻訳者が書いた本日本語を磨く本異文化を学ぶ本