◆━2004/05/12 第0028号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<投稿記事>
◆「翻訳ブランド競争」平岩大樹(通訳翻訳館)
<書籍紹介>
◆『翻訳語の論理』柳父章(著)
◆『「商い」から見た日本史』伊藤雅俊 斎藤善之
網野善彦(著)
◆『ビジョナリー・カンパニー 2』ジェームズ・C・コリンズ(著)
山岡洋一(訳)
◆『ブランディング22の法則』アル・ライズ
ローラ・ライズ(著) 片平秀貴(訳)
<編集後記>
◆「そこそこのゆくえ」平岩大樹(通訳翻訳館)
<投稿募集>
◆「あなたからの投稿を掲載します」
<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「翻訳ブランド競争」
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日本の出版市場は高度成長期から低成長期に入った。大手出版社がそろって大赤字
となった事実は、日本の出版市場が高度成長期から低成長期に移行したことを意味し
ている。
出版社は出版市場に中身の薄い本や出版ラインを増やしただけの商品を大量投入し
た。だが、高度成長を前提とした「量の拡大作戦」は機能しなかった。なぜなら、日
本の出版市場が「量の拡大」から「質の追求」へと移行したからだ。
高度成長期は、生産を増やす形で量的な競争が行なわれる。だが、低成長期に移行
すると質的な競争が始まる。つまりブランド化が進行する。商品のブランド化は、す
でに江戸時代からはじまっており、全国的な流通網ができあがって物不足が解消する
とブランド競争が激化する。
「神戸和牛」や「博多の明太子」は、日本を代表する特産品として世界的な競争力
を持つばかりでなく、強力な独自ブランドをつくりあげている。江戸時代から続くブ
ランド競争は、日本の伝統であり文化である。
ブランド競争はよいよいものをつくりあげる原動力となり、世界に通用する商品を
生み出してきた。ホンダ、ソニー、トヨタは日本で育ったグローバルブランドであり
、世界に通用するブランドを構築できたのは、質の高いブランド競争があったからだ
。
日本の出版市場が「量の拡大」から「質の追求」へと変化していくなかで、どのよ
うな変化がおこるのかは歴史が教えてくれる。それはブランド化であり、ブランド競
争が激化するということだ。
だから翻訳書は翻訳ブランドが重要になる。翻訳家が重要なポジションを支配する
。出版社がつくりあげてきた出版社ブランドだけでは、ブランド大競争時代に勝ち残
れない。出版社は自社の出版社ブランドと翻訳家が持つ翻訳ブランドを組み合わせ、
融合して独自ブランドをつくり、育てていくことになる。
いままでのように一冊単位で翻訳家と契約するやり方は通用しなくなる。出版社が
つくりあげてきた出版社ブランドはすでに廃れ、質を追求する市場ニーズには対応で
きなくなった。資本力のある出版社は一流の翻訳家を囲い込み、一流の翻訳家は自ら
の翻訳ブランドを武器にして強力な「力」を行使しはじめる。
出版社の間で翻訳家のぶんどり合戦がはじまり、出版社は翻訳する原書がなくても
、一流の翻訳家をつなぎとめておかなければならなくなる。ほかの出版社に引き抜か
れないよう報酬、待遇面での競争もはじまる。
成熟した出版市場では、出版社ブランドと翻訳ブランドを融合させ、独自ブランド
をつくりあげていかなければ「質」を求める市場から相手にされない。一流の翻訳家
、一流の編集者、一流の出版社の情熱がぶつかり合い、融合して強力なブランドが生
まれ、育っていく。
言葉は生きている。50年も経過すれば言葉だって力を失いはじめる。いまの日本
では古典が忘れられ、放置され、死にかけている。古典は、翻訳ブランド競争に火を
つける最高の燃料となる。
翻訳ブランド競争の第一段階は、古典の新訳ラッシュではじまる。古典は、生きた
言葉を操る翻訳家の感性と情熱によって魂を吹き込まれ、新ブランドとして復活する
。古典の蘇生には、生きた言葉を操る一流の翻訳家が必要だ。インチキ翻訳者では、
古典はよみがえらない。
ブランド競争は生産者の意識を根底から変える。ブランド競争がはじまると、なん
でも屋はいらなくなる。なんでも屋は淘汰され、消えていく。ブランド競争で勝ち残
るのは、他にはない強みを持ち、その強みを徹底して磨きあげる生産者だけだ。
(平岩大樹=通訳翻訳館)
[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]
◇掲載記事
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◇いままでの記事一覧
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<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――
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■◇『翻訳語の論理―言語にみる日本文化の構造
』
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【著者】柳父 章
【出版社】法政大学出版局
【発刊年月】2003年01月20日
【本体価格】3360円 (税込)
【ページ数】341p
【ISBN】4588436066
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4588436066/ithouse-22
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作られた言葉である翻訳語は、結局、翻訳者、造語した者の意図通りの言葉にはなら
ない。それは、海の彼方の先進文明国の言葉の意味を、そのままこちらに持ち運び、
伝達し、有効に機能する言葉とはなり得ない。
本文35pより抜粋(92年新装版)
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本書は現代日本語のなかに宿る古代日本文化の正体を探ったものである。人間が使
う言葉には伝達、表現、思考の機能を持つが、けっして従順な「道具」ではないと著
者はいう。
日本には「和漢混交」の型が千年の時をかけてつくりあげられており、日本語の文
体、日本人のものの考え方、日本人のものの理解のし方の型として組み込まれている
と指摘する。「和漢混交」の型がどのようにして生まれ、現代に受け継がれているの
か。
古代知識人が書き残した『万葉集』を手がかりに、素朴な大和言葉がどのようにし
て現代日本語に進化してきたのか。その進化の過程に「翻訳」がどのような役割を果
してきたのかを明らかにしている。
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■◇『「商い」から見た日本史―市場経済の奔流をつかむ』
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【著者】伊藤 雅俊 斎藤 善之 網野
善彦
【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2000年10月19日
【本体価格】1265円 (税込)
【ページ数】238p
【ISBN】4569613217
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569613217/ithouse-22
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私たちが国際社会で生きていくために、なすべき使命を果たしていくためには、日本
の社会についてもっと正確に理解し、自らについて正確な認識を持っていなくてはな
りません。そうでないと、伸ばすべきものを潰し、無駄なエネルギーを使い、とんで
もないところに日本人がいってしまう危険性があります。
本文64pより抜粋
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本書は日本での商業がいつはじまり、どのような発展をとげて現代に続いているの
かを探ったもの。鎌倉、室町、江戸時代をへて蓄積された商業・金融の力量がどれほ
どのものだったのか、江戸の市場経済がどのように機能していたのかを明らかにして
いく。
米本位体制という枠組みの中で、貨幣経済を発展させ、米の先物市場を開いた江戸
。封建経済の枠組みを越えて全国展開した海商、金融・為替を業務とする両替商が築
きあげた高度な信用制度など、市場原理に基づく競争激化とブランド化が進んだ江戸
文化とは何か。
明治政府が主導し成功させた近代化を下支えした日本独自の優れた産業・商業資本
の伝統と流れがどういうものであったのか、現在も途切れることなく受け継がれる商
人道とは何なのかが綴られている。
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■◇『ビジョナリー・カンパニー 2―飛躍の法則
』
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【著者】ジェームズ・C・コリンズ
【訳者】山岡 洋一
【出版社】日経BP出版センター
【発刊年月】2001年12月21日
【本体価格】2310円 (税込)
【ページ数】360p
【ISBN】4822242633
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822242633/ithouse-22
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ほんとうに問題なのは、「なぜ偉大さを追及するか」ではない。「どの仕事なら、偉
大さを追求せずにはいられなくなるか」だ。なぜ「偉大さを追求しなければならない
のか、そこそこの成功で十分ではないか」と問わなければならないのであれば、おそ
らく、仕事の選択を間違っている。
本文330pより抜粋
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本書は「良好」を超えて「偉大」な業績をあげている企業に共通する特徴とは何で
あるのか、偉大な業績と企業組織を作り上げる会社とそうでない会社にはどのような
違いがあるのか、経営陣へのインタビューと膨大な内部資料をもとにその違いを分析
したものである。
米国上場企業1435社の中から選別された11社の超優良企業と、おなじような
ビジネス環境と事業規模を持ちながら超優良企業になれなかった企業とを比較分析し
、飛躍的な成長を可能にしたものとは何であったのかを解明している。
偉大な企業を組織し、運営し、業績を上げるには何が必要なのか。わけのわからな
い経営理論や難解な経営学用語を使うことなく、だれにでも理解することができる分
析結果が導き出されている。
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■◇『ブランディング22の法則』
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【著者】アル・ライズ ローラ・ライズ
【翻訳】片平 秀貴
【出版社】東急エージェンシー出版部
【発刊年月】1999年11月22日
【本体価格】1785円 (税込)
【ページ数】270p
【ISBN】488497073X
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/488497073X/ithouse-22
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今日、ほとんどの商品やサービスがあるのは、それが顧客に支持され購入されている
からであって、優秀な営業力でそれを売り込んでいるからではない。そしてこのプロ
セスを促進しているのがブランディングである。
本文7pより抜粋
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本書は消費者から選ばれるサービス・商品とは何か、消費者から選ばれないサービ
ス・商品とは何かを明らかにしたうえで、その背後にあるマーケティング戦略の違い
を「ブランディング思考」に基づいて解説したものである。
ゼロックス、フェデラル・エクスプレス、スターバックスなどに共通するプランド
構築手法を取り上げ、ブランド構築に成功した企業と失敗した企業の差は何だったの
か。
またプランド構築に成功した企業が陥りやすい失敗事例を取り上げ、失敗を回避し
強固なブランド構築を行なうためにはどうすればよいのか、コカ・コーラ、マクドナ
ルドなどの失敗事例を取り上げて解説している。
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■◇「そこそこのゆくえ」
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そこそこの年収、そこそこの会社、そこそこの生活。そこそこって何だろう。そこ
そこは適当とも違うし、いい加減というわけでもない。「そこそこ〜」と語る人から
情熱や使命感は伝わってこない。
そこそこは、人並みという言葉と仲がいい。人並みって何なのかを考えてみれば「
そこそこ」が出てくる。そこそこの年収、そこそこの会社、そこそこの生活というヤ
ツだ。
よくよく考えてみると、人並レベルは人によって違う。資産家は何千万円もする外
車を乗りまわして「人並み」だと感じているかもしれないし、エリート社員なら新車
で「人並み」だと感じているかもしれない。
「人並み」や「そこそこ」を使えば楽だ。まわりを見回して「人並みで」、「そこ
そこで」とやればいい。深く考えなくてもいいし、いちいち悩まなくてもいい。ただ
、「人並み」や「そこそこ」を使い続けると、その人の想像力は衰えていく。
(平岩大樹=通訳翻訳館)
[編集後記は「館長室だより」として通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]
◇編集後記(館長室だより)
http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20040512.htm
◇いままでの編集後記一覧(館長室)
http://www.ithouse.net/japanese/director.htm
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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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「通訳翻訳ビジネスレポート」ではメディアが取り上げない通訳翻訳業界の現状を
取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
の資格は「通訳翻訳ビジネスレポート」の読者であればどなたでも応募いただけます
。
原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。
原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。
応募原稿体裁―「通訳」または「翻訳」をキーワードに政治・経済・文化などにつ
いてのあなたご自身のご意見を1行全角38字詰め、総字数1000字〜2000字(見出しを
含む)にまとめ、下記アドレスへお送りください。メールアドレスのみの匿名による
応募も受け付けますが会社名、氏名、メールアドレス、ホームページURLの表記を
ご希望の方は記入ください。
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いう文言を記入してください。
随時募集いたしております、奮ってご応募ください。
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