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通訳翻訳ビジネスレポート No.31 2004/06/16 投稿:大翻訳家の理念
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◆━2004/06/16 第0031号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「大翻訳家の理念」平岩大樹(通訳翻訳館)

<書籍紹介>
 ◆『福翁百話』福沢諭吉(著) 岩松研吉郎(訳)
 ◆『自助論』サミュエル・スマイルズ(著) 竹内均(訳)
 ◆『ガキの自叙伝』稲盛和夫(著)
 ◆『失敗の本質』戸部良一 他(著)

<編集後記>
 ◆「神さま、仏さま」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「大翻訳家の理念」
■■………………………………………………………………………………………………

 中国の経済成長を「脅威」だとか、「機会」だとかいっている人間は傲慢病の末期
患者だ。日本は中華文明から多大な恩恵を受けてきたし、中華文明の「寛大さ」がな
ければ、いまの日本などない。その歴史をすっかり忘れ、先人の偉業も忘れるから幻
想にとりつかれる。

 中国は数千年前から「大国」だったし、これからも「大国」であり続ける。「脅威
」だとか、「機会」だとか声高に叫んでいる人間は、嫉妬心と恐怖心にとりつかれて
いる。恐れることなど何もない。中国と日本は数千年にわたって共存共栄することが
できたし、これからも共存共栄することができる。歴史はそれを証明している。

 中国の経済成長を「脅威」だとか、「機会」だとかいって叫んでいる人間の考えは
、こうだ。「日本には優れた技術がある、だが中国に追いつかれる」、「日本のハイ
テク分野は、中国に真似できない」、「日本は、中国にできないことをしなければな
らない」などなど。

 歴史を紐解けば、中華文明をつくりあげてきた人は勤勉で優秀だった。火薬、羅針
盤、印刷術をはじめとする大発明を生み出したのも中国だった。中国は、日本が持っ
ている優れた技能、技術を驚くべきスピードで吸収できるし、実際そうなっている。
日本にできて、中国にできないことなど何もない。そう考えて間違いない。

 中国は日本から学んだものを独自に発展させ、磨きをかけることだってできる。中
国は、けっして劣ってはいないし、遅れてもいない。中国は中国なのである。どこか
で借りてきた「モノサシ」で中国を計ってみても、中国は中国でしかない。なぜなら
、中国は数千年前から「大国」だからだ。

 この事実を忘れるから、中国の経済成長を「脅威」だとか、「機会」だといって騒
ぐことになる。日本は傲慢病にかかっている。日本は異文化、異文明の多様性を認め
、謙虚に学び続けることの大切さを忘れた。「和の理念」も忘れ、中国を敵視したり
、アジア諸国を軽視したりする。

 傲慢病の傲慢ウィルスは人間だけでなく会社、社会、文明にも感染する。傲慢ウィ
ルスに感染して傲慢病になると、必ず衰退して崩壊する。傲慢ウィルスは成功したり
、勝利したときに襲ってくる。

 大成功や大勝利は傲慢ウィルスを強力に引きよせる。日本は戦後復興という大事業
に成功した。だが、傲慢病にかかった。日本の傲慢病は治療されることなく放置され
、現在にいたっている。

 傲慢ウィルスは数々の大文明を滅ぼしてきた最強のウィスルだ。古代ローマ帝国も
、古代イスラム帝国も、この傲慢ウィスルにやられた。傲慢ウィスルは隔離すること
もできなければ、絶滅させることもできない。医療技術がいくら進んでも、テクノロ
ジーがいくら進歩しても傲慢ウィスルは、けっしてなくなりはしない。

 先人たちは宗教や道徳をもちいて傲慢ウィルスと闘ってきた。傲慢病を予防する方
法は、宗教や道徳のなかで繰り返し唱えられている。正直、誠実、謙虚、忍耐、勤勉
などの教えは、たしかに傲慢病を予防してきた。

 傲慢病は不正直、不誠実、怠慢、軽視、蔑視といった症状をともなって発症する。
傲慢病が悪化し末期状態になると、ハッタリやごまかしが蔓延し会社全体、社会全体
が腐りはじめる。危機を危機として認識できなくなり、有効な対策や予防処置が実施
されず、放置される。

 日本人なら、だれでも知っている大翻訳家がいる。知らない人は、まずいない。子
供から老人まで、爆発的な人気がある。その大翻訳家は、多くの人を魅了し、ときに
は人の心を狂わせる。日本人の日常生活に深く入り込み、静かにこちらをみつめてい
る。

 一万円札に刷り込まれた福沢諭吉は、教育者であり、学校経営者でもあった。日銀
のホームページには「啓蒙思想家」として紹介されているが、福沢の偉業は翻訳にあ
り、近代日本の土台をつくった大翻訳家である。福沢は西欧文明と日本文明の本質を
見抜き、西欧の「智」と日本の「徳」を調和させて「智徳」とし、新しい日本を創造
していけと説いた。

 「徳」は古代中華文明と古代日本文明の融合によって生みだされたイノベーション
だ。中国に「飲み込まれる」とか、中国を「取り込め」とかいう議論はピントが外れ
ている。中国は日本を飲み込まないし、日本は中国を取り込めるほどの「大国」じゃ
ない。数千年にわたって共存共栄してきた史実を、いま見つめ直せば何をすべきかは
、はっきりしている。

 ちょうど1400年前、聖徳太子は憲法十七条を制定し、憲法第一条で「和をもっ
て貴し」と定めた。聖徳太子は古代中華文明と古代日本文明の本質を見抜いた。だか
ら「和の理念」を第一条にもってきた。

 古代中華文明の陰陽思想を理解し、憲法十七条を制定した聖徳太子も、大翻訳家だ
った。聖徳太子が制定した「和の理念」は「徳」を生み出し、「智徳」となって現代
日本に受け継がれている。

 一つの市場、一つの世界にむかって突き進むグローバル化は、お互いの多様性を認
め、尊重し合う理念を必要としている。アジアの扉をひらき、一つの市場、一つの世
界にむけて必要な理念は「和の理念」だ。日本人は、このことを自覚し、先人たちが
営々と築き上げてきた文化、思想、理念から学び、驕ることなく世界の多様性を学び
続けなければならない。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20040616.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇『福翁百話―高く評価される人の行動ルール』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】福沢 諭吉
【現代語訳】岩松 研吉郎
【出版社】三笠書房
【発刊年月】2002年11月25日
【本体価格】1470円 (税込)
【ページ数】252p
【ISBN】4837919863
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4837919863/ithouse-22

──────────────────────────────────────
人物が志を立てるについては、最初から自分の大方針を定めることはむろん大切であ
るが、それを決めた以上は、あくまでも固く守って変えることなく、終始これを貫く
根気はさらに大切である。
                           本文14pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は『学問のすすめ』の応用・実践編にあたるものである。福沢が日常生活での
ささいな出来事から、人間関係、仕事の取り組み方、文明社会の正体、欲望の本質を
掘り下げて解説していく。

 福沢は終始一貫して「自尊自重」の精神を養えと主張する。人は人、自分は自分な
のだという「独立」の精神が最も重要なものであると説く。自分自信を尊いものと認
識し、自分自身を尊重することができる独立した人間になれという。

 たんに志を立てるだけでなく、一度決めた志を貫きとおす根気と覚悟。どんな小さ
なことでも軽視せず、小さなことを推し進めていくことで起こりうる社会の進歩と発
展。人生の苦しみと楽しみをあじわいつくす、人の生き方とはどのような生き方なの
かを語っている。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『自助論―人生の師・人生の友・人生の書』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】サミュエル・スマイルズ
【翻訳】竹内 均
【出版社】三笠書房
【発刊年月】2003年03月15日
【本体価格】1470円 (税込)
【ページ数】269p
【ISBN】4837956300
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4837956300/ithouse-22

──────────────────────────────────────
どんな分野であれ、成功に必要なのは秀でた才能ではなく決意だ。あくまで精一杯努
力しようとする意思の力だ。この意味で人間の性格の中心をなす力であり、つまると
ころ人間それ自身であるともいえよう。
                           本文95pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は西欧文明史に名を残した偉人、天才たちに共通する基本的な資質とは何かを
調べあげたものである。中村正直が明治4年に翻訳出版した『西国立志編』の新訳版
で、福沢諭吉の『学問のすすめ』とならび近代日本の形成に多大な影響を与えた名作


 本書では、有名無名をとわず「一流」の人物だけに焦点をあて、偉大な業績を残す
ことができた人とそうでない人との違いを明らかにしていく。偉人、天才たちに共通
する基本的な姿勢、態度とは何であったのか。

 誠実、正直、勤勉、忍耐をとうしてつくりあげられた習慣がどのような結果を生み
出し、不誠実、不正直、傲慢、怠慢をとうしてつくりあげられた習慣がどのような結
末をもたらすのか。西欧文明史に書き残された史実を、そのまま現代日本に伝えてい
る。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『ガキの自叙伝』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】稲盛 和夫
【出版社】日本経済新聞社
【発刊年月】2002年01月15日
【本体価格】1470円 (税込)
【ページ数】247p
【ISBN】4532164044
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532164044/ithouse-22

──────────────────────────────────────
世間では、富を蓄え、地位や名誉を得ることが生き甲斐という人もいるが、私は「世
のため人に尽くすことが、人間として最高の行為である」といい続けてきた。善きこ
とを思い、善きことを実践すれば、善き結果を招く。悪いことをすれば悪い結果を招
来する。  
   本文236pより抜粋
──────────────────────────────────────

 著者は京都セラミック株式会社(現京セラ)の創業者。現代日本を代表する企業経
営者の一人で、現在も京セラの名誉会長を務めている。また京セラ独自のファインセ
ラミックス技術を開発したエンジニアでもある。

 本書は2001年3月から日本経済新聞の「私の履歴書」に連載された著者の記事
を大幅に加筆・編集したものである。著者が出生した1932年(0歳)から200
1年(69歳)までの軌跡が綴られている。

 仕事や経営について学ぼうとしている人、自分の生き方を学ぼうとしている人のた
めに著者が自分の挫折、失敗、成功の実体験をありのまま語っている。売上1兆円を
超え、さらに発展していく京セラの理念とは何か、人の生き方とは何かが示されてい
る。

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■◇『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】戸部 良一 他
【出版社】中央公論社
【発刊年月】1991年08月10日
【本体価格】800円 (税込)
【ページ数】413p
【ISBN】4122018331
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122018331/ithouse-22

──────────────────────────────────────
事実を冷静に直視し、情報と戦略を重視するという米軍の組織学習を促進する行動様
式に対して、日本軍はときとして事実よりも自らの頭のなかだけで描いた状況を前提
に情報を軽視し、戦略合理性を確保できなかった。
                           本文328pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は大東亜戦争における日本軍の失敗を見つめ直し、日本軍が持っていた組織特
性、組織的欠陥とは何であったのかを分析したものである。ノモンハン事件、ミッド
ウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦でなぜ日本軍
が大敗したのかを探っていく。

 西欧の近代的官僚制と日本独自の集団主義を融合させたハイブリッド軍隊を「組織
」という切り口から失敗要因を抽出。日本軍が陥った失敗がどこで発生し、どのよう
に放置または強化され、敗戦につながっていったのか明らかにしている。

 日露戦争で圧勝した明治の軍人。彼らがつくりあげたハイブリッド軍隊の強さとは
何だったのか。奇襲作戦から生まれた白兵銃剣主義、大艦巨砲主義による艦隊対決思
想が、やがて機能不全に陥り衰退、崩壊していったのはなぜか。失敗の本質を直視し
、現代日本に受け継がれる悪習をあぶりだす。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


<= 編集後記 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「神さま、仏さま」
■■………………………………………………………………………………………………

 6月は神道で「おおはらえ」という神事をおこなう月だそうだ。仏教を叩き込まれ
ると、神道の神事や祭事のことなどまったく知らないで育つ。基本的に神道は「邪教
」であると教わる。

  自らの宗教、宗派こそが唯一の正統であり、他の宗教、宗派は異端だと教える。仏
教にもキリスト教やイスラム教のように、宗派があり宗派間の対立がある。遠い遠い
昔、日本にも激しい宗教戦争があった。だがいま、「神さま、仏さま」となって調和
している。

 日本文明は上も下も、右も左も、正統も異端も、勝ちも負けもなく、すべてを受け
入れ併存させる。「神さま、仏さま、キリストさま」なんでも受け入れる。「神さま
」の神道は日本古来の宗教であり、多神教だ。その本質は、多様性を認める宗教であ
る。

 神道の神様はひとりじゃない。土の神さま、水の神さま、火の神さま、石の神さま
、風の神さま。その数800万というから、驚いた。「仏さま」である仏教は中国大
陸から伝来したものの、800万1番目の神様となって日本に溶け込み、調和した。
「神さま、仏さま」という考え方、これってスゴイ考え方なのだ。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[編集後記は「館長室だより」として通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]

 ◇編集後記(館長室だより)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20040616.htm

 ◇いままでの編集後記一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「あなたからの投稿を掲載します」
■■………………………………………………………………………………………………

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取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
の資格は「通訳翻訳ビジネスレポート」の読者であればどなたでも応募いただけます


 原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。

 原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。

 応募原稿体裁―「通訳」または「翻訳」をキーワードに政治・経済・文化などにつ
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応募も受け付けますが会社名、氏名、メールアドレス、ホームページURLの表記を
ご希望の方は記入ください。

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せんのでご承知おきください。お手数ですが、送信メールの件名には必ず「投稿」と
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