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通訳翻訳ビジネスレポート No.32 2004/06/23 投稿:語学屋の正体
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◆━2004/06/23 第0032号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「語学屋の正体」平岩大樹(通訳翻訳館)

<書籍紹介>
 ◆『日本人よ。成功の原点に戻れ』M・B・モハマド(著) 橋本光平(訳)
 ◆『新訳 経営者の条件』P・F・ドラッカー(著) 上田惇生(監訳)
 ◆『ヴァージン』リチャード・ブランソン(著) 植山周一郎(訳)
 ◆『ブランド広告』内田東(著)

<編集後記>
 ◆「神さまの田んぼ」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「語学屋の正体」
■■………………………………………………………………………………………………

 通訳者や翻訳者のことを「語学屋」だと勘違いしている人がいる。一部には「語学
屋」と呼ばれて喜んでいる人もいるようだが、通訳者や翻訳者は「語学屋」じゃない
。通訳者は「通訳者」だし、翻訳者は「翻訳者」だ。

 どの分野でも一流になると、個人名がブランドになる。たとえば、「世界のオザワ
」といえば指揮者の小澤征爾になる。音楽家は「作曲家」、「ピアノ奏者」、「指揮
者」などと呼ばれることもあるが、けっして「音楽屋」、「演奏屋」とはいわない。
まして、一流の音楽家や演奏者に「音楽屋」、「演奏屋」などという人は、まずいな
い。

 一流の音楽家や演奏者を「音楽屋」、「演奏屋」などということができる人は、音
楽にまったく興味のない人か、音楽のことをまったく知らない人のどちらかだ。音楽
のことを知りながら「音楽屋」、「演奏屋」などというのであれば、それは傲慢な人
間か、驕っている人間でしかない。

 一流の通訳者や翻訳家のことを「語学屋」などと勘違いしている人は、異文化にま
ったく興味のない人か、異文化のことをまったく知らない人のどちらかだ。異文化の
ことを知りながら通訳者や翻訳家のことを、「語学屋」などというのであれば、それ
は傲慢な人間か、驕っている人間でしかない。

 自分のことを「語学屋」だといっている人間は、通訳者でもなく、翻訳者でもなく
、作家でもなく、技術者でもない。通訳者でもないのに通訳者のマネごとをやり、翻
訳者でもないのに翻訳者のマネごとをやり、作家でもないのに作家のマネごとをやり
、技術者でもないのに技術者のマネごとをやっている。だから、自分の職業に自信が
ない。

 職業は、ひとりの人間がその全情熱をかけて追いかけるものだ。通訳者、翻訳者は
職業であって「語学屋」じゃない。「語学屋」とは、要するに「なんでも屋」のこと
だ。通訳者でもなければ翻訳者でもない。自分の生き方に自信がない人間が「語学屋
」などといって、自分自身をごまかしているにすぎない。

 「語学屋」は通訳者でもないのに通訳者のマネごとをやり、翻訳者でもないのに翻
訳者のマネごとをやり、作家でもないのに作家のマネごとをやり、技術者でもないの
に技術者のマネごとをやっている。

 自分を信じ、自分の足で立ち、自分の職業に「誇り」を持っている人間が、通訳者
であり、翻訳者だ。たしかに「語学屋」は、通訳者のマネごとや、翻訳者のマネごと
ができる。だが、ホンモノじゃない。

 通訳者は「通訳」することに、翻訳者は「翻訳」することに情熱と使命を持って生
きている。一流ともなれば、「通訳」することに、「翻訳」することに、すべてを賭
ける覚悟ができる。だから、一流の通訳者、翻訳家は人に感動を与えることができる
。そこが「語学屋」と根本的にちがう。

 言葉は生き物であって、道具じゃない。言葉を道具として扱うと、とんでもない大
失敗や大損害につながる。重要な場面で言葉の使い方を間違えれば、転落と崩壊の道
が待っている。一流の通訳者と翻訳家は、生きた言葉を操ることができる。しかし、
「語学屋」には、それができない。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20040623.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇『日本人よ。成功の原点に戻れ』
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【著者】マハティール・ビン・モハマド
【翻訳】橋本 光平
【出版社】PHP研究所
【発刊年月】2003年08月08日
【本体価格】1575円 (税込)
【ページ数】213p
【ISBN】4569631452
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569631452/ithouse-22

──────────────────────────────────────
世の中は、さまざまな文化や習慣、民族、宗教があるからこそ、バラエティーに富ん
でいて面白いのである。われわれは、他人が重要であると考える価値観や思想を粗末
にしてはならない。むしろ、違う文化から学び、楽しむことができることは、まさに
人間としての喜びであることに早く気づくべきた。
                           本文82pより抜粋
──────────────────────────────────────

 著者は、日本の戦後復興を模範に「ルック・イースト政策」をかかげたマレーシア
の元首相。本書は太平洋戦争で大敗した日本が、どのようにして戦後復興、高度成長
、土地バブル崩壊をへて世界第二位の経済大国を維持しているのか、その成功のシス
テムを指摘したものである。

 土地バブル崩壊後に発生している日本社会の混乱は、行き過ぎた「アメリカ化」に
あると著者はいう。そもそも国際標準化、グローバリゼーションの正体は、アメリカ
が勝つシステムであり、物質万能主義に基づく利益追求型の競争社会だけでは二十一
世紀の世界システムになりえないと。

 粗悪品をつくる国として認識され、尊敬も支持もされなかった戦前の日本製品。敗
戦による体制崩壊によって生み出された「高品質、低価格」の日本製品が、なぜ世界
の支持を得るようになったのか。成功の原点にもどって、よく考えてみなさいと綴っ
ている。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『新訳 経営者の条件』
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【著者】ピーター・F・ドラッカー
【監訳】上田 惇生
【出版社】ダイヤモンド社
【発刊年月】1995年1月26日
【本体価格】1529円 (税込)
【ページ数】243p
【ISBN】447832073X
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447832073X/ithouse-22

──────────────────────────────────────
人間の卓越性は、一つの分野、あるいはわずかの分野においてしか、実現されない。
確かに、多様なものに関心をもつ人間は存在する。しかし「万能の天才」といっても
、たかが知れている。多くの分野において卓越した業績のある人間は、存在しない。
                          本文100pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は仕事で「成果」をあげるためにはどのような能力が必要なのかを解明したも
のある。自らをマネジメントする必要のある人間は何を知り、何からスタートすれば
よいのか「身につけるべき5つの習慣的な能力」を提示している。

 得意なこと、できること、強みを基盤にして仕事を構築しなければ卓越した成果は
望めないという。不得意なこと、できないこと、弱みを中心に据えて仕事をすること
がどのような結果を生むのかも語っている。

 すべての基本は自分の時間がどのように使われているかを知ることからはじまると
いう。仕事の時間、プライベートな時間を管理しコントロールできるようにすること
が何を意味し「成果」とどのような関係があるのか明らかにしている。

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   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


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■◇『ヴァージン―僕は世界を変えていく』
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【著者】リチャード・ブランソン
【翻訳】植山 周一郎
【出版社】ティビーエスブリタニカ
【発刊年月】1998年9月30日
【本体価格】1890円 (税込)
【ページ数】607p
【ISBN】4484981122
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484981122/ithouse-22

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成功するためには、自分自身でやってみて、実践を身に付けなければならない。まわ
りにいいチームがいて、さらに幸運が重なれば、何かをしでかすことができるかもし
れない。しかし、他人の手法を真似するだけでは、成功はまた保証できないのだ。
                          本文580pより抜粋
──────────────────────────────────────

 著者はヴァージン・アトランティック航空、ヴァージ・シネマ、ヴァージン・メガ
ストアなどのヴァージングループをゼロから作りあげた人。高速艇や熱気球による大
西洋横断を行なった冒険家としても知られている。

 本書はイギリスでもっとも成功しているといわれる起業家の自伝である。著者がど
のような家庭環境のもとで成長し、ビジネスをスタートさせたのか。警察や競合相手
からの妨害や脅迫をのりこえ、強力なブランド企業を築きあげることできた鍵とは何
だったのかが語られている。

 パブリックスクールを中退し、二人ではじめた学生雑誌「スチューデント」を皮切
りにレコードショップ、レコード産業への進出。航空産業への挑戦など不可能を可能
にする著者のチャレンジ精神とバイタリティーに圧倒される一冊である。

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■◇『ブランド広告』
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【著者】内田 東
【出版社】光文社
【発刊年月】2002年9月20日
【本体価格】735円 (税込)
【ページ数】227p
【ISBN】4334031587
【購入】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334031587/ithouse-22

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品質さえよければものが売れるとは限らない。小型車市場で、品質ナンバーワンのブ
ランドが売上では十二位であった例もある。ブランドとは競合他社製品よりも品質が
よいことだとみる人がいるが、品質とはもはや消費者が抱いているブランドイメージ
にことを指すのである。
                          本文194pより抜粋
──────────────────────────────────────

 著者は広告代理店の電通でキリンビール、三菱電機、味の素などの広告キャンペー
ンに参加しコピーライターのキャリアを積んだ人。大企業が展開する広告手法や広告
制作活動がどのように行なわれ発信されてきたのかを知る人物でもある。

 本書は広告をみる消費者の視点から企業のブランド・イメージはどう発信されるべ
きなのかを教えてくれる。消費者からみえるブランドの見え方をどう工夫することで
ブランド・イメージを強固にすることができるのか。

 広告表現は何を基準にして作成し、消費者に対してどのような見せ方をするのが効
果的なのか。ソニー、富士フィルム、大正製薬、桃屋が展開している広告CMと広告
コンセプトを使って解説している。

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<= 編集後記 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇「神さまの田んぼ」
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 神さまの田んぼのことを「神田」というそうだ。石神井氷川神社には、小さな「神
田」があり、新嘗祭で献穀する稲が大切に育てられている。神さまの田んぼに植えら
れた稲たちは、ぐんぐんと背丈が伸び、すごい勢いで成長している。

 神さまの田んぼに植えられた稲たちを眺めていると、広大な農地がひろがる江戸の
ねりまが目に浮かんだ。江戸のねりまには、全国的に知られた「ねりまブランド」が
あった。江戸のねりまでしか生産できない大根、「ねりま大根」だ。
 
 江戸のねりまには、武蔵野の豊かな水源と肥沃な土壌があり、巨大都市「江戸」と
商業都市「川越」を結ぶ宿場があった。江戸のねりまは、地の利を徹底的に活かし「
ねりまの大根」を全国的に売り込んだ。農家間の生産競争、品質競争をへて生み出さ
れたのが「ねりま大根」だった。

 現在の練馬にはキャベツ畑やネギ畑が残っているだけで、大根の畑はない。近くの
スーパーや八百屋にも「練馬大根」はない。練馬区の区報には「練馬大根が一部の農
家で栽培され、種が保存されている」という記事があった。江戸の食文化を支えたね
りまは、競争するブランド産地だった。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[編集後記は「館長室だより」として通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]

 ◇編集後記(館長室だより:神さまの田んぼ画像あり)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20040623.htm

 ◇いままでの編集後記一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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