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通訳翻訳ビジネスレポート No.56 2005/05/25 投稿:支配のための日本語
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◆━2005/05/25 第0056号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「支配のための日本語」平岩大樹(通訳翻訳館)

<書籍紹介>
 ◆『近代日本語の思想』柳父章(著)
 ◆『「ゴッド」は神か上帝か』柳父章(著)

<館長室だより>
 ◆「温室植物園」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「支配のための日本語」
■■………………………………………………………………………………………………

 納税者の長者番付が話題にのぼった。2004年、日本での納税額が一番多かった
人が、「サラリーマン」だというから話題性もあった。ただ今回、「サラリーマン」
という言葉を聞いていて、語感のズレを感じた。

 「サラリーマン」でも、「フリーター」でも、「ニート」でも、「エコンザミン」
でも共通して持っている言葉の性質がある。その性質とは「空(から)」だという性
質だ。「サラリーマン」という言葉は、それなりに意味づけされ、マスメディアでも
頻繁に使われるから、ちゃんとした意味のある言葉だと思われている。

 ところが、百億円もの給与所得がある会社員を「サラリーマン」と表現しただけで
、語感のズレがオモテに現われる。なぜなら、「サラリーマン」という言葉では、こ
の会社員のような巨額給与所得者のことを表現しきれないばかりか、とらえきれない
からだ。

 この語感のズレに着目し、週刊誌や新聞紙あたりで「スーパーサラリーマン」だと
か、「勝ち組みサラリーマン」だとかなんとかいってベラベラ解説しはじめる人間が
そのうち現われるはずで、たいていアカデミズムという「上界」からマスメディアと
いう「下界」に下ってくる。

 いくら現代語用語辞典で「新造語」を整理分類しても、語感のズレは解消しない。
。「間違った日本語」などといってみても、「誰が」間違ったと判断し、その決定は
「誰が」するのか、なぜそうすることができるのかをよくよく観察していけば、最後
に「権威」という言葉に行き着く。

 現代日本語というものを、その生成時点までさかのぼり、現在と過去を連結してみ
ると、「間違った日本語」などといっている人間は、いったいどういう意図をもって
「間違った」と発信しているのか、その真の目的を見抜くことができる。

 柳父章はその著書『近代日本語の思想』のなかで、こう指摘している。

  日本語の文章といえば、その一つの典型的な形として、「〜は」で始まって、「
 ……た」や、「……である」で終わり、そのあとに句点「。」を打つというような
 形を、人々は思い浮かべるのではないか。それは「文」という単位として、今日の
 日本語を書く人の常識になっているだろう。ところが、今から百年ほど前には、日
 本語には、そんな形はなかったのである。そういう形は、ほとんどすべて、西洋語
 の 翻訳の結果として、人為的につくられていったのである。(66p)

 つまり、現代日本語というものは、人為的につくられた文章体であり、翻訳文体、
翻訳造語を組み合わせた人造文体、人造語なのだと柳父はいう。

 別の著書『「ゴッド」は神か上帝か』では、現代日本語の不完全性をも指摘する。

  文体を軽視した翻訳文は、当然のことながら人に訴える魅力が乏しいであろう。
 これは現代日本語の宿命とも言うべき問題なのだが、私たちの現代口語体とは、完
 成されたものではない。まだ完成途上にある文章体なのだ、という視点が必要では
 ないか、ということをここで言っておきたいと思う。(161p)
    
 要するに、現代日本語というものは「穴だらけ」の未完成語で、いくらでも改善改
良することができるのだと。

 古代や中世ならいざしらず、現代日本語は一部の権力者や支配者のものではないし
、アカデミズムのものでもない。教育者のものでもなければ教師のものでもない。ま
してや、文法書をつくった死人のものでもない。

 言葉には、目に見えない強力な支配力がある。敗戦から60年、戦没者は「あれよ
、あれよという間に戦争にのみ込まれ」、いつのまにか「必勝玉砕」を叫びながら散
っていった。けっして、目には見えない言葉の支配力。それが、「必勝玉砕」の言葉
のなかにも組み込まれていた。

 現代日本語は、「必勝玉砕」のような「支配のための日本語」であってはならない
し、これから翻訳によってつくられる新しい日本語も、「支配のための日本語」であ
ってはならない。

 「間違った日本語」を意図的につくりだし、「正しい日本語とは」などといって自
らを権威づけしようとする人間。文法書を「聖典」であるかのように天にかざし、人
々を従属させ、支配しようとする人間。「間違った日本語」や「正しい日本語」とい
う思想のなかにも「支配のための日本語」が潜んでいる。

(平岩大樹=通訳翻訳館)

 ◇平岩大樹
  1998年10月、「通訳翻訳館」の前身となった非営利求人求職サイト「個人
  翻訳通訳館」を立ち上げる。2000年に同サイトを「通訳翻訳館」に名称変更
  するとともに「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職サイトを始める。現在、通
  訳翻訳館の館長。http://www.ithouse.net


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20050525.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm

 ◇記事を投稿する
  http://www.ithouse.net/japanese/column/send.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇『近代日本語の思想―翻訳文体成立事情』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】柳父 章
【出版社】法政大学出版局
【発刊年月】2004年11月25日
【本体価格】2625円 (税込)
【ページ数】242p
【ISBN】4588436104
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4588436104.htm

──────────────────────────────────────
日本の画期的な時代の転換は、新しい文字の出現という面から捉えることができる、
と私は考えている。そして言葉が人間の文化や、人間精神の基本構造であるという立
場で考えるなら、新たに出現した文字が、新時代を造ってきた、とも言えるであろう

                           本文195pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は近代日本語はどのようにして成立したのか、そしてそれがどのような形で現
代日本語のなかに受け継がれているのかを探ったものである。西欧文化をモデルにし
た日本の近代化は、西欧語の翻訳によって日本語じしんをつくりかえ、日本の文化そ
のものをつくりかえたのだと著者はいう。

 現代口語文を構成する文章構造は西欧文の翻訳によってつくられた構造であり、基
本となる主語、述語、句読点ですら翻訳文によって取り込まれ、さまざまな試行錯誤
を繰り返しながらつくられた文体なのだと指摘する。

 翻訳による言葉の変化は偶然に、しかも突然発生するもので、異文化を日本文化に
受容する過程で起こる。漢字を日本に受容してから千年、古代日本から続く異文化の
受容構造は、いまだに「セクハラ」や「アカハラ」という現代日本語のなかに受け継
がれ機能しているのだと解き明かしている。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『「ゴッド」は神か上帝か』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】柳父 章
【出版社】岩波書店
【発刊年月】2001年06月15日
【本体価格】1155円 (税込)
【ページ数】263p
【ISBN】4006000561
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4006000561.htm

──────────────────────────────────────
文体を軽視した翻訳文は、当然のことながら人に訴える魅力が乏しいであろう。これ
は現代日本語の宿命とも言うべき問題なのだが、私たちの現代口語体とは、完成され
たものではない。まだ完成途上にある文章体なのだ、という視点が必要ではないか、
ということをここで言っておきたいと思う。
                           本文161pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は中国語、日本語に翻訳された聖書の翻訳語に見い出される西洋文化としての
キリスト教とは何かを探ったものである。イギリス人宣教師、ロバート・モリソンと
その息子ジョン・モリソンが携わった翻訳と通訳の業績から西洋による植民地侵略の
基本原理を見直し、その特質を取り上げている。

 ロバート・モリソンが遺した中国語版聖書『神天聖書』、世界初の英中辞書『英華
字典』から翻訳家モリソンの翻訳思想を分析し、キリスト教の宣教エネルギーと深く
結びついた西欧文明の侵略性をえぐりだす。

 モリソン訳聖書の訳語を受け継いだ日本語訳聖書から、日本語の「神」と中国語の
「神」概念を比較し、その違いはどこから生まれているのか。翻訳家モリソンが選ん
だ翻訳語「神」の背後にある文化の違いがどう関係しているのかを考察している。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


<= 館長室だより =>―――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「温室植物園」
■■………………………………………………………………………………………………

 練馬には区立の温室植物園がある。いままで、何度かこの植物園の前を車で通って
いる。にもかからず、そこが「練馬区立温室植物園」だとは気づかなかった。建物ら
しきものが、まさか温室植物園だったとは。

 この温室植物園の広さは510平方メートル、高さは12メートルあり、パパイヤ
、マンゴー、バナナ、カカオなどの熱帯植物が250種も育てられている。ちょうど
いまの時期だと、キダチチョウセンアサガオの花やパパイヤの花を観察することがで
きる。

 さすがに温室なので、じっと植物観察しているだけで汗がふき出てくる。250種
もの熱帯植物が育てられているのだが、その一つ一つを観察するには暑すぎる。今回
は、パパイヤとマンゴーの大木を観察することにした。

 パパイヤもマンゴーも種から木に育てたことがあるので小パパイヤ、小マンゴーの
木はよく知っている。大木でも葉の形、枝の形、幹の模様は同じだが、大きさが違う
。温室植物園に植えられている大木も、かつては小さな種から芽が出た小パパイヤ、
小マンゴーだった。大きさに目を奪われず、細部をよく観察すれば、そのことがよく
わかる。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[館長室だよりは通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]

 ◇館長室だより(「マンゴー」などをデジカメで撮影しました)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20050506.htm

 ◇いままでの館長室だより一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「あなたからの投稿を掲載します」
■■………………………………………………………………………………………………

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取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
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ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
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ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
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