◆━2005/09/02 第0063号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<投稿記事>
◆「明治憲法にあった言葉」平岩大樹(通訳翻訳館)
<書籍紹介>
◆『文化 一語の辞典』柳父章(著)
◆『翻訳文化を考える』柳父章(著)
<館長室だより>
◆「ミンミンミン選挙」平岩大樹(通訳翻訳館)
<投稿募集>
◆「あなたからの投稿を掲載します」
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■◇「明治憲法にあった言葉」
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1947年5月3日に施行された日本国憲法と1889年2月11日に施行された
大日本帝国憲法を読み比べていくと、いろいろと気づくことがある。現憲法は補則を
含めて103条の条文で構成されているが、旧憲法は補則を含めて76条の条文しか
なかった。
大日本帝国憲法から日本国憲法に改正された際、新たに27条分の条文が増えたわ
けだが、それぞれの条文を読み比べていくと、27条分ではなく40条ちかい「異質
な条文」が、現憲法に書き加えられていることがわかる。
新たに書き加えられた「異質な条文」のなかで、とりわけ目立つのが憲法第9条の
条文だ。この憲法第9条の条文は、明らかに翻訳文であり、翻訳語によって条文が組
み立てられている。
憲法第9条の条文はこうだ、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠
実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を
解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と。
この条文を、翻訳文として読んでみると、まず「正義」、「基調」、「希求」、「
国権」、「発動」という翻訳語にひっかかる。何度も読み直しているうちに「国際平
和」、「国際紛争」という翻訳語にも、ひっかかる。そこで、翻訳語とはどういう言
葉なのか、柳父章の『翻訳語の論理』の中から引用してみよう。
「作られた言葉である翻訳語は、結局、翻訳者、造語した者の意図通りの言葉に
はならない。それは、海の彼方の先進文明国の言葉の意味を、そのままこちらに
持ち運び、伝達し、有効に機能する言葉とはなり得ない。」(35P)
柳父の言葉を借りれば、憲法第9条を含め現憲法に書き加えられた「異質な条文」
は、戦勝国側の言葉の意味を、そのまま敗戦国である日本に持ち運び、伝達し、有効
に機能する言葉にはなり得えなかった。
見方をかえると、戦勝国側の言葉の意味をそのまま日本で機能させるためには、戦
勝国側の言葉をそのまま用いて憲法を制定する必要があった。戦勝国側は、日本の翻
訳文化の本質を理解できなかったし、理解させなかったからこそ、いまの日本国憲法
があるわけだ。
柳父章は、別の著書『翻訳文化を考える』の中でこう指摘している。
「翻訳語は、第一に、具体的なイメージとのつながりが乏しい。そして、具体的
なイメージが乏しいにもかかわらず、何かしら確かな、正しい意味がそこにある
、と感じられている。この感じそのものは、ことばの意味とは言えないかもしれ
ない。少なくとも、ふつうの意味ではない。が、それは、結果として、重要な文
脈上の意味を生みだしているのである。」(10p)
現憲法は、戦勝国側によってつくられた言葉の意味をそのまま伝えない。憲法第9
条をはじめ、現憲法に書き加えられた「異質な条文」は、日本がもつ翻訳術によって
「新たにつくりだされた条文」である。「悪文」、「おしつけ」という憲法観は、戦
勝国側が残した原文にひきずられ、その原文にとらわれている。
大日本帝国憲法第73条にはこうあった、「将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要
アルトキハ」と。現憲法第96条に受け継がれた条文ではあるが、旧憲法にあった重
要な言葉が削られている。それは、「将来」という言葉だ。
「将来」という言葉を使う時、人は「現在」を考える。「現在」と「将来」を比べ
ながら、「将来」あるべき姿を考える。また、「現在」は「過去」の積み重ねである
から、「現在」を考えていけば、当然「過去」も振り返る。大日本帝国憲法第73条
に書き込まれていた「将来」、この言葉の中に先人たちの憲法観があった。
(平岩大樹=通訳翻訳館)
◇平岩大樹
1998年10月、「通訳翻訳館」の前身となった非営利求人求職サイト「個人
翻訳通訳館」を立ち上げる。2000年に同サイトを「通訳翻訳館」に名称変更
するとともに「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職サイトを始める。2000
年から通訳翻訳館の館長。http://www.ithouse.net
[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]
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■◇『文化 一語の辞典』
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【著者】柳父 章
【出版社】三省堂
【発刊年月】1995年12月01日
【本体価格】1050円 (税込)
【ページ数】100p
【ISBN】4385422052
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4385422052.htm
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私たちが使う「文化」という言葉は、近代以後の西洋語からの翻訳語だということで
ある。そうすると、たとえば「日本文化」と言えば記紀万葉や華道、俳諧などから説
き起こされることが多いが、近代以前の日本人は、こういう事象を、「文化」という
言葉で語ったことは決してなかったはずなのだ。言葉がなかったということは、その
ような概念、視点が存在しなかったということである。
本文97pより抜粋
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本書は翻訳語「文化」のなかに混在している複数の抽象概念を明らかにし、その語
源にさかのぼって現代日本語「文化」のあり方を捉えなおしたものである。現代日本
語「文化」のなかには、漢籍渡来の意味と西洋語の意味があり、新たにつけくわえら
れ、拡張された意味もあると著者はいう。
福沢諭吉が創りだした「文明開化」。文明にむかって「開化」するという福沢のも
のの見方、考え方により生まれた西欧との比較。西欧との対比により認識され、概念
化され、創られたもの、それが近代日本語「文化」の中核にあったのだと。
江戸時代から使われてきた漢籍渡来の「文化」、明治初期のシヴィリーゼーション
の訳語「文化」、ドイツ語のクルトゥールの意味を受け取った大正昭和の「文化」な
ど、時代により「文化」がどのようして使われてきたのかをふりかえり、これから創
られてゆくであろう「文化」の中身を考察している。
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■◇『翻訳文化を考える』
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【著者】柳父 章
【出版社】法政大学出版局
【発刊年月】1978年07月10日
【本体価格】2310円 (税込)
【ページ数】245p
【ISBN】4588436031
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4588436031.htm
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およそ二つの異質な体系を持つ言語をくらべて、一方が合理的、他方が非合理的、一
方が明晰、他方が曖昧、というように分かつ基準はない、という言うのが正しい、と
考える。そう言うよりも、英文は英文なりに、そして日本文は日本文なりに、もとも
と「合理的」であり、それなりに「明晰」なのだ、と言った方がよい。
本文70pより抜粋
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本書は先進異文化の受容のためにつくられた日本の翻訳文化とはどのような文化な
のかを探ったものである。異文化を受容する際に動き出す日本語の受容機能と翻訳語
との関係を明らかにしたうえで、現代日本語がどのようにしてつくられてきたのかを
さかのぼっていく。
現代日本語の中には、伝統的な大和ことば、古代中国渡来のことば、西欧語からの
翻訳語と外来語という三つの異質な層があると著者はいう。明治のはじめにつくられ
た「社会」などの翻訳語は、明治維新以前に浸透していた和漢混交型の考え方を応用
してつくられた言葉なのだと。
言文一致体や現代口語文という文章構造すら、西欧文を模範にしてつくられた翻訳
日本文であり、要は人工文体であると指摘する。翻訳語という意味の極めて乏しい人
工語は、後から意味づけされる言葉であって、このような異文化受容法はオモテ・ウ
ラに通じる日本文化の土台を支える基本「形」になっていると著者は考える。
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<= 館長室だより =>―――――――――――――――――――――――――――――
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■◇「ミンミンミン選挙」
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去年の夏にも選挙があった。参議院選挙がそれだ。去年の参院選から、候補者がネ
ットで情報発信するようになり、選ぶ方としても候補者が何を考え、何を実現したい
のか、少しはわかるようになった
しかし、9月11日の投票日は偶然なのか、それとも意図されたものなのだろうか
。「郵政解散」というのだから、郵政問題が話題になるかと思えば、「刺客」だの、
「対抗馬」だの、「パラシュート」だのと騒がしい。
練馬区の選挙区は東京都第10区と第9区に分かれていて、最初の「刺客」が登場
した東京都第10区がある。それにしても、「選挙区とは何か」を考えさせられる。
政治の混乱か、はたまた新時代の入り口か、いまはよくみえない。
勢いよく鳴いているセミの大合唱を聞いていると、政治も「民、民、民」ばかりだ
と思えた。はたしてそれだけでいいのか。「郵政民営化ができなければ、ほかの大改
革などできない」という考え方の裏に何があるのか、「人生いろいろ」発言を含め、
この4年間の政治をじっくり振り返ってみることにしよう。
(平岩大樹=通訳翻訳館)
[館長室だよりは通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]
◇館長室だより(「ノカンゾウの花」などをデジカメで撮影しました)
http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20050827.htm
◇いままでの館長室だより一覧(館長室)
http://www.ithouse.net/japanese/director.htm
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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
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原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。
原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。
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含む)にまとめ、下記アドレスへお送りください。メールアドレスのみの匿名による
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