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■「通訳ロボットと翻訳文化」-2004/03/20
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 通訳ロボットといえば映画『スターウォーズ』を思い出す。スターウォーズには、さまざまなロボット(ドロイド)が登場する。医療ドロイド、警備ドロイド、パイロットドロイド、給仕ドロイド、スパイドロイドなどなど。人間型ロボット(3PO)がなぜ「通訳ロボット」なのか考えたことはあるだろうか。

 スターウォーズほど「言語」の重要性をみごとに表現してみせた作品はない。結論からいえば、「言語」がとてつもなく重要になった。だからといって「英語を学べ」などというつもりはない。むしろ、苦労して外国語など学ばなくていい。

 地球環境、新素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、いろいろと未来産業を担う有力候補があがっているが、カギになるのは「言語」だ。新素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーの謎を解き明かすカギは「言語」のなかにある。飛躍的な技術進歩を可能にする機会は「言語」が握っている。

 「言語」を支配する者が世界のすべてを動かす、そういう社会になる。なにも未来の空想ばなしを語っているのではない。グローバル化した世界経済に国境はすでにない。あるのは「言語」の壁だけだ。「言語」を支配すれば、世界の力関係はすっかり変わる。「言語」を支配すれば、強大なパワーを持つ。「言語」を支配すれば、古代から現代にいたる人類の英知がすべて手に入る。

 通訳ロボットの「頭脳」を誰が開発し、誰がそれを支配するのか。真剣に議論されることはない。SFオタクの空想ばなしで片づけられている。幸運なことに、日本にはその技術がいまある。どう使えばいいのか、どう役立てたらいいのか、まだ気づいていない。

 技術もまだある、人材もまだいる、カネもまだある。ないのは国家ビジョンと理念だけだ。やれIT立国だ、観光立国だ、知財立国だ、環境立国だなどといっているが、実現するための情熱、使命、理念がどれも欠如している。なぜなら、きたるべき社会の国家ビジョンがないからだ。

 いったいどういう国を創るのか、これからの世界情勢のなかでどのようにして生き残っていくのか、世界に対してどのような影響力をもつ国になるべきなのか、政府の「国家戦略メモ」には書かれていない。IT、観光、知財、環境はどれもよりよい社会を創るための「材料」だ。何を創るのか、どう料理するのか、それがわからなければ得意の「模倣」もできない。

 日本は翻訳超大国だ。翻訳に関して日本を超える国はどこにもない。歴史を紐解いて古代イスラム帝国やルネサンス期のヨーロッパまで遡らなければ、まともに勝負できる国がない。日本には千年以上の歴史と文化を築きあげてきた「翻訳文化」がある。日本は中華文明、西欧文明、アメリカ文明の優れたところだけを学び、自己改造と自己改良にはげんできた。

 戦後の奇蹟的な経済成長を可能にしたのは、いうまでもなく「翻訳文化」があったからだ。運もよかったし、根性のある経営者もいた。だが、運だけで経済大国を維持することはできない。いまの日本があるのは「翻訳文化」のおかげだ。

 日本の強みとは何か。それは自己改造と自己改良ができるところにある。つまり「翻訳文化」に力の源がある。日本文明史のなかで「モノづくり」が得意になったのは、つい最近のことだ。製造業で「モノづくり」が得意になったのは、自己改造と自己改良の結果に過ぎない。「翻訳文化」があったからこそ、製造業で「モノづくり」が得意になったことを忘れている。

 日本の未来は「翻訳文化」に磨きをかけ、発展させることにある。その道具として使うのが「通訳ロボット」だ。「モノづくり」が突出して得意になったため「ハコづくり」が先行しているが、「頭脳」になるのは「翻訳文化」だ。「ハコ」ばかりつくって、「頭脳」を「IBM製」にするつもりなら日本に未来はない。

 あまり注目されないが、すでに通訳ロボットは実在する。2003年の年末に発表されたNECの「パペロ」がそれだ。開発者には失礼だが、通訳ロボットが社会に与える影響力を考えれば、まだ「おもちゃ」だ。マスメディアも「パペロ」を「おもちゃ」として扱っている。マスメディアは通訳ロボットがもつ潜在力、将来性、侵略性にきずいていない。まさかその「おもちゃ」が新世界を支配するほどの力を秘めているとは、だれも思ってもいない。

 通訳ロボットはまもなく「おもちゃ」ではなくなる。海外旅行で、国家間交渉で、宇宙ステーションで、軍事兵器として使われるときがくる。通訳ロボットの「頭脳」を握る者が新世界を支配する。「頭脳」を握る者が莫大な富を生み出す。マイクロソフトやインテルをみてみればいい。

 NECの「パペロ」をみれば、NECが「ハコづくり」に興味がないことがすぐわかる。NECはあきらかに「頭脳」を狙っている。「ハコづくり」が得意なのはホンダ、ソニー、トヨタだ。ロボットに挨拶をさせたり、踊らせたり、指揮をさせるのもいいが、そんなことは人間がやればいい。

 スターウォーズに登場する「C−3PO」が600万を超える言語を操り、話者の文化的特徴を踏まえて通訳ができることは知っているだろうか。600万の中には「古代言語」や「暗号」も含まれている。「古代言語」を蘇らせ、力を与えることができるのが「通訳ロボット」だ。日本企業が「ハコ」と「頭脳」の両方を押えたとき、日本は強大な「パワー」を持つ。

 千年以上にわたる日本の「翻訳文化」の本質を理解し、「翻訳文化」を通訳ロボットの「頭脳」にできる者は新世界を支配する。NECが先行しているのはたしかだが、NECが「帝国」になれるかどうかはわからない。千年以上にわたる日本の「翻訳文化」の本質を理解し、未来社会を創造する者だけがレースに参加できる。繰り返すが、「言語」がとてつもなく重要になった。

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平岩 大樹(ひらいわ たいき)

 1998年10月、通訳翻訳館の前身となった求人求職マッチングサイト「個人翻訳通訳館」ウェブサイトを立ち上げる。2000年に同サイトを通訳翻訳館に名称変更し「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職マッチングサイトを開設。現在、通訳翻訳分野における「求人と求職のミスマッチ解消」を使命とし通訳翻訳館を運営している。




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