Google(グーグル)が市場投入したスマートフォン「ネクサス・ワン」。アッ
プルのiPhoneと日本のケータイ端末と比較して、何がスゴイところなのか、いま
いちよく伝わっていない。実際、「ネクサス・ワン」の端末出荷台数の苦戦が報道されているわけだけれど。
Google(グーグル)が、どういう意図を持ってスマートフォン「ネクサス・ワ
ン」を市場投入したのかという基本戦略部分でふと思ったのは、もともとアップ
ルのiPhoneや日本のケータイ端末と真っ向からやりあうつもりなんてなかったん
じゃないか。
たしかに、パッと見たところ携帯電話だし、利用用途もアップルのiPhoneや日本のケータイ端末とかぶっているところもある。Google(グーグル)が自前で携帯用OSアンドロイドを開発し、さらに専用の高性能携帯端末までつくって市場に投入してくる。
検索広告事業で築き上げた潤沢な資金を使って自由な研究開発ができるからだろうと思ってしまったけれど、これはもっと大きな野心と大戦略に基づいて投入
されているのかもしれない。
そう思ったキッカケは、2010年1月25日の世界経済フォーラム(ダボス会議)でGoogle(グーグル)最高経営責任者エリック・シュミットが発言した「翻訳」に対するGoogle(グーグル)社の位置づけ。
驚くことに、ハイテク技術の発展と進歩のなかで特に重要だとする機能が「翻訳」だというのだ。エリック・シュミットがいうところの「翻訳」というのは、Google(グーグル)で提供している「Google翻訳」などの高性能機械翻訳システムや、それに続くリアルタイム通訳システムを意味している。
よく知られているように、Google(グーグル)は書籍のデジタル化を推進していて、人類が築いてきた知(文字化され、言語化された知)の全インデックス化を目標としている。
文字化され言語化されたウェブ上のテキスト情報、「Google翻訳」という高機能機械翻訳システム、スマートフォン「ネクサス・ワン」という携帯用高機能端末、開発中とされる携帯用リアルタイム通訳システム。すべてを組み合わせたところにGoogle(グーグル)の世界戦略がある。
ダボス会議でエリック・シュミットは「モバイル世代の読解力」について「懸念している」と発言している。西欧ヨーロッパ言語のモバイル世代が置かれている言葉環境、利用環境についてはコメントできる立場ではないが。
日本の日本語でのモバイル世代については身近な存在なので、観えているもの、聞こえてくるもの、言えるものがある。エリック・シュミットが懸念していた「読解力」、もっというと「深く読み解く力」は低下しているどころか、新たな可能性が生まれている。
間違っても「読解力が低下している」だなんて、バカげたことは思っていない。むしろ、ケータイという新しいモバイルデバイスが日本語を新たな言語、新たな言葉のあり方、言葉のかたちへと進化を促している、と思えるほどだ。
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