日本では2000年を境に通信費用が大幅に下がり、さまざまなネットコンテンツとそれを支える莫大なインターネットユーザ達が生まれた。個人でもインターネットを使って海外から物品を購入したり、海外オークションに参加したりと、海外サイトにアクセスするだけで日本では手に入らない様々なモノ・サービスを手に入れることができるようになった。
5年前まで20代〜30代の男性が中心だったインターネットユーザが情報通信機器の低価格化、高速インターネット接続費用の低下により20代〜30代の男性だけではなく幅広い年齢層のインターネットユーザが誕生。そのユーザ数は、2001年には3000万人の大台を突破した。かつて企業や学校などに限られていたインターネット利用が家庭まで浸透してきたことでインターネットを使ったネット関連ビジネスが賑わう。
高速インターネット接続によりネットショピング、ネットオークションが発達し、中間業者を飛ばした「中抜き」現象が業種、業態を問わず広がった。翻訳市場も例外ではない。サービス提供者(翻訳者)とクライアント(翻訳発注者)が直接結びつき仲介者(翻訳会社)を必要としない取引が増えている。なぜなら、翻訳者が受け取る報酬は上がるしクライアント(翻訳発注者)も安く発注できるからだ。
いままで知人や友人の紹介などによってサービス提供者(翻訳者)とクライアント(翻訳発注者)が直接結びつくことはあったが、主なルートは翻訳会社の仲介ルートが大半を占めていた。そのため何よりも「翻訳会社」に登録することが翻訳者になるための第一歩だと書かれていることが多い。しかし翻訳市場を取り巻くビジネス環境はここ2年で劇的に変化した。
インターネットユーザの広がりとともに情報通信技術を活用したフリーランス翻訳者。もはやホームページ、メール、ファックスと能力さえあれば世界のどこにいても翻訳業ができる。インターネットにある最後の壁、それは「言葉の壁」である。インターネット上で翻訳者は習得言語の「言葉の壁」がない。そのため習得言数に比例し、ネット情報収集力が高まる。
翻訳者がインターネットを使えば国境という地理的市場と言葉という言語的市場を瞬時に飛び越え、巨大なグローバルマーケットにアクセスできる。グローバル化した世界経済と連動する巨大な翻訳市場で世界各国の翻訳会社、翻訳者達が入り乱れて熾烈な競争を繰り広げている。フリーランス翻訳者達は次々にデジタル武装し、力のある翻訳会社は世界各国から能力と才能のある翻訳者を次々に引き抜く。
インターネットの出現まで地理的に遮断されていた日本の翻訳市場。インターネットの出現により、日本の翻訳市場はいやおうなしに世界のグローバルマーケットに飲み込まれた。その結果、既存の国内翻訳会社と海外の翻訳会社、デジタル武装したフリーランス翻訳者集団と翻訳会社、国内フリーランス翻訳者と海外フリーランス翻訳者との競争が始まった。
|