私がカナダに住むようになってから20年を越えた。この間にさっさとカナダ国籍を取得したので、「外人」になってしまった。私が日本の現状についてとやかく書けば、「外国人がガタガタ言うことはない」とどこかの知事さんにいわれそうだが、それでも「元祖国」の現状と将来に苦言を呈したい。
先日のNHKの番組では「少子化社会」の問題を扱っていた。確かに大問題のようなのだが、私の見るところ、「国際化の遅れ」も大きな問題である。ある日本の大手商社を客にして、日本から来る商社マンやエンジニアの通訳、書類の翻訳などを始めて5年ほどになる。
来訪者はほとんど例外なく、大学卒であり、大学院を出ている場合もまれではない。そしていわゆる「一流会社の社員」なのだ。なのに、彼らの英語での会話能力には唖然とさせられる。仕事上での会話はもちろん、レストランでの注文、ホテルでのチェック・インもままならないではないか。
最近の某新聞の報道によれば、都が各都立高校に「数値目標を出せ」と命じたところ、「○○大学に○○名合格」といったような予備校まがいの目標を掲げた高校が半数以上あったという。
日本国内での視点からはこうした目標しか出て来ないのかもしれない。高校の先生方がどんな目標を掲げようと、私がとやかく言うことではないのだろうが、一言だけ言わせてもらえれば、そのようにして有名大学に入学し、卒業し、一流企業に入社した、これからの日本を背負うはずの若者のほとんどは、上記のように英語でほとんど会話ができないのである。
言い換えれば、通訳がつかなければ日本から一歩もでられないような若者なのだ。「○○大学卒」などと言っても所詮日本国内でしか通じない。国外でその「有名」大学名を口にしたところで、「フーン、そうですか」といったような反応しか返ってこないだろう。こんなこと、くだんの都立高校の先生方は「考えたこともない」と言われるだろうか。
世界がこれほど小さくなった今、日本から「一歩も出られない」ということがどういうことなのか、まず教育界の皆さんに考えて欲しい(本来は為政者がまず考えるべきことかと思うが、今の日本の政治家に「国際化」が考えられるとは思えないので期待しない。
冒頭にその発言を引用させてもらった知事さんがいい例である。私は教育現場での草の根運動に期待したい。だからこうして先生方に苦言を呈しているのだ)。こういう小さな島国の中だけで「活躍」できる若者を作り出すのが教育の「目標」だ、というのならただただ呆れてしまうだけだ。
こうした学校、社会で学び育つ日本の高校生はまったく気の毒である。彼らは「井の中の蛙」になるのだろう。これが海外の視点である。このままでは少子化とともに日本の活力は萎えていくばかりであろう。
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