スクール関連産業がにぎわっている。大手から小さな零細企業まで、あきれるほどスクールビジネスが流行している。なぜスクール関連産業がにぎわうのか。それは翻訳会社や通訳派遣会社の本業が儲からないからだ。経営の多角化じゃない。翻訳ビジネスや通訳派遣だけではやっていけないのだ。
確固たる経営理念を持って本業に打ち込んでいる翻訳会社や通訳派遣会社は、スクールビジネスなんぞに手を出さない。本業をしっかりやってる。ビジネス環境はよくないが、生き残っていくだけの力と覚悟がある。一方、カネ儲けしか眼中になかったところは、焦り、混乱し、こぞってスクールビジネスに参入している。
「儲かる」、「稼げる」というキャッチコピーをばらまきながら、さかんに宣伝している。悲しいかな、通訳と翻訳という仕事は儲かる仕事、稼げる仕事ではない。そんなに「儲かる」、「稼げる」というのなら、そうやって宣伝している会社や個人はさぞかし儲けることができただろう。いまごろ、株式を上場できる大企業に成長しているか、大金持ちになっているはずだ。
だが、そんな企業はどこにもないし、通訳翻訳成金なんてのもいない。それどころか「儲かる」、「稼げる」などといって、さかんに宣伝しなければならないほど追い詰められている。「儲かる」、「稼げる」のはスクール関連産業の方であって、本人ではない。外国語という「特殊幻想効果」を使い「ドロ舟」を「豪華客船」のごとく宣伝している。
「儲かる」、「稼げる」という甘い言葉で素人を誘い込み、「ちょろい仕事」だといってカネ儲けを企む。「儲からない」、「稼げない」、「生活できない」のが翻訳者、通訳者の現実だ。使命と情熱をもった人だけしか生き残ることができない。「儲かる」、「稼げる」などといって人心を惑わし、錯誤させ、儲けようとする。
この業界で信頼できるのは、厳しい競争に勝ち残った一流の翻訳家や通訳者だけだ。スクール関連産業が発信する「幻想」にとりつかれている人は、厳しい競争に勝ち残った翻訳家や通訳者の言葉を受け入れようとしない。「毒」だとか「良薬」とか何とか言って、素直に感謝しない。それほどスクール関連産業が発信する「幻想」が蔓延している。
翻訳会社や通訳派遣会社が「スクールでもやるか」といってスクール関連産業に進出する背景には、これらの企業が担ってきた仲介機能が崩壊しはじめているからだ。価格競争は激化し、翻訳会社や通訳派遣会社はさらに単価や時給をひき下げる。結果として、実力と経験を持った翻訳者、通訳者は流出する。
流出した一部はインタ―ネットと携帯ツールを使って個人事業化し、さらに価格競争を激化させる。せいぜい個人名と電話番号を電話帳に掲載するしかなかった頃、翻訳会社や通訳派遣会社の仲介機能は非常によく機能した。しかし、インターネットや各種携帯ツールが登場し、ヘタな翻訳会社や通訳派遣会社よりも個人の方が強くなってしまった。
翻訳会社や通訳派遣会社といっても、数名の従業員しかいない零細企業ばかりだ。個人事業者や副業組みとの価格競争が激化するなか、確固たる経営理念や使命を持っていなければかんたんにつぶれる。スクールビジネスに参入するのはいいが、「儲かる」、「稼げる」などといって「幻想」をばらまいても経営は安定しない。
それどころか、経営はますます悪化することになる。確固たる経営理念と使命を持った翻訳会社や通訳派遣会社に負け、大手のスクールや私塾にも負ける。個人事業者や副業組みとの価格競争にも負ける。企業の社会的使命を自覚せず、自らの哲学と正しい経営理念を持たないところは、自らの手で自分の首を締めることになるだろう。
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