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■「大翻訳家の理念」-2004/06/16
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 中国の経済成長を「脅威」だとか、「機会」だとかいっている人間は傲慢病の末期患者だ。日本は中華文明から多大な恩恵を受けてきたし、中華文明の「寛大さ」がなければ、いまの日本などない。その歴史をすっかり忘れ、先人の偉業も忘れるから幻想にとりつかれる。

 中国は数千年前から「大国」だったし、これからも「大国」であり続ける。「脅威」だとか、「機会」だとか声高に叫んでいる人間は、嫉妬心と恐怖心にとりつかれている。恐れることなど何もない。中国と日本は数千年にわたって共存共栄することができたし、これからも共存共栄することができる。歴史はそれを証明している。

 中国の経済成長を「脅威」だとか、「機会」だとかいって叫んでいる人間の考えは、こうだ。「日本には優れた技術がある、だが中国に追いつかれる」、「日本のハイテク分野は、中国に真似できない」、「日本は、中国にできないことをしなければならない」などなど。

 歴史を紐解けば、中華文明をつくりあげてきた人は勤勉で優秀だった。火薬、羅針盤、印刷術をはじめとする大発明を生み出したのも中国だった。中国は、日本が持っている優れた技能、技術を驚くべきスピードで吸収できるし、実際そうなっている。日本にできて、中国にできないことなど何もない。そう考えて間違いない。

 中国は日本から学んだものを独自に発展させ、磨きをかけることだってできる。中国は、けっして劣ってはいないし、遅れてもいない。中国は中国なのである。どこかで借りてきた「モノサシ」で中国を計ってみても、中国は中国でしかない。なぜなら、中国は数千年前から「大国」だからだ。

 この事実を忘れるから、中国の経済成長を「脅威」だとか、「機会」だといって騒ぐことになる。日本は傲慢病にかかっている。日本は異文化、異文明の多様性を認め、謙虚に学び続けることの大切さを忘れた。「和の理念」も忘れ、中国を敵視したり、アジア諸国を軽視したりする。

 傲慢病の傲慢ウィルスは人間だけでなく会社、社会、文明にも感染する。傲慢ウィルスに感染して傲慢病になると、必ず衰退して崩壊する。傲慢ウィルスは成功したり、勝利したときに襲ってくる。

 大成功や大勝利は傲慢ウィルスを強力に引きよせる。日本は戦後復興という大事業に成功した。だが、傲慢病にかかった。日本の傲慢病は治療されることなく放置され、現在にいたっている。

 傲慢ウィルスは数々の大文明を滅ぼしてきた最強のウィルスだ。古代ローマ帝国も、古代イスラム帝国も、この傲慢ウィルスにやられた。傲慢ウィルスは隔離することもできなければ、絶滅させることもできない。医療技術がいくら進んでも、テクノロジーがいくら進歩しても傲慢ウィルスは、けっしてなくなりはしない。

 先人たちは宗教や道徳をもちいて傲慢ウィルスと闘ってきた。傲慢病を予防する方法は、宗教や道徳のなかで繰り返し唱えられている。正直、誠実、謙虚、忍耐、勤勉などの教えは、たしかに傲慢病を予防してきた。

 傲慢病は不正直、不誠実、怠慢、軽視、蔑視といった症状をともなって発症する。傲慢病が悪化し末期状態になると、ハッタリやごまかしが蔓延し会社全体、社会全体が腐りはじめる。危機を危機として認識できなくなり、有効な対策や予防処置が実施されず、放置される。

 日本人なら、だれでも知っている大翻訳家がいる。知らない人は、まずいない。子供から老人まで、爆発的な人気がある。その大翻訳家は、多くの人を魅了し、ときには人の心を狂わせる。日本人の日常生活に深く入り込み、静かにこちらをみつめている。

 一万円札に刷り込まれた福沢諭吉は、教育者であり、学校経営者でもあった。日銀のホームページには「啓蒙思想家」として紹介されているが、福沢の偉業は翻訳にあり、近代日本の土台をつくった大翻訳家である。福沢は西欧文明と日本文明の本質を見抜き、西欧の「智」と日本の「徳」を調和させて「智徳」とし、新しい日本を創造していけと説いた。

 「徳」は古代中華文明と古代日本文明の融合によって生みだされたイノベーションだ。中国に「飲み込まれる」とか、中国を「取り込め」とかいう議論はピントが外れている。中国は日本を飲み込まないし、日本は中国を取り込めるほどの「大国」じゃない。数千年にわたって共存共栄してきた史実を、いま見つめ直せば何をすべきかは、はっきりしている。

 ちょうど1400年前、聖徳太子は憲法十七条を制定し、憲法第一条で「和をもって貴し」と定めた。聖徳太子は古代中華文明と古代日本文明の本質を見抜いた。だから「和の理念」を第一条にもってきた。

 古代中華文明の陰陽思想を理解し、憲法十七条を制定した聖徳太子も、大翻訳家だった。聖徳太子が制定した「和の理念」は「徳」を生み出し、「智徳」となって現代日本に受け継がれている。

 一つの市場、一つの世界にむかって突き進むグローバル化は、お互いの多様性を認め、尊重し合う理念を必要としている。アジアの扉をひらき、一つの市場、一つの世界にむけて必要な理念は「和の理念」だ。日本人は、このことを自覚し、先人たちが営々と築き上げてきた文化、思想、理念から学び、驕ることなく世界の多様性を学び続けなければならない。

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平岩 大樹(ひらいわ たいき)

 1998年10月、通訳翻訳館の前身となった求人求職マッチングサイト「個人翻訳通訳館」ウェブサイトを立ち上げる。2000年に同サイトを通訳翻訳館に名称変更し「通訳」と「翻訳」に特化した求人求職マッチングサイトを開設。現在、通訳翻訳分野における「求人と求職のミスマッチ解消」を使命とし通訳翻訳館を運営している。




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