Column
通訳翻訳館
コラムトップ 記事ボックス 記事を投稿 閲覧の注意 ホームヘ


■「避けて通れない問題」-2005/01/30
Mag2 Logo
通訳翻訳ビジネスレポート』メールマガジンで新着情報をお届けします(登録無料)


 通訳・翻訳者はもちろん、中国語・韓国語を理解する者の全てが、避けて通れない問題がある。日本の戦争責任と戦後補償、反日感情の問題だ。どこの国にも右翼、左翼はいる。親中・反中、親韓・反韓、親朝・反朝、親台・反台、いろいろいてあたりまえだし、現実にいる。

 相手国にもいろいろいる。親日と反日に二分されるわけではない。百家争鳴の論点ほど重要である。言葉が分かる者だけが、生の意見に触れられる。言葉が分かるからこその、つらさも経験せざるを得ない。
 
 自分が知った隣国の人の意見を、どこまで日本人に伝えるのか、伝えないのか。通訳・翻訳の依頼を受けて名前が出るだけで「あいつはアッチ側の人間だ」とレッテルが貼られたりもする。

 仕事の場でもヒヤヒヤの連続。話された内容を、どの言葉でどれだけ伝えるのか、略すのか、通訳の一瞬の判断だ。翻訳なら、自分がどの語を選び、何を削ったか、形になって残り、国際紛争に発展しかねない。

 関わると危ないと思うなら、何も伝えず見て見ぬフリ、それも1つの選択肢だ。だが、冷蔵庫のおかずがカビているのを見て、またフタを閉じて戻すような、後ろめたさはぬぐえない。思想が問われ、行動が問われ、勇気が問われる。それでもやるという人間が、もっともっと出てこなければいけない。

 日本人の耳目をいくらふさいでも、現地での言論は流通し、世論を形作っていく。隣国との間で、意識の乖離はますます進む。もはや「天動説」と「地動説」くらいのギャップができている現状をどうしていくつもりなのか。言葉を理解するものが間に立たなくてどうするのか。

 シャットアウトは、決して解決ではない。また、完全にシャットアウトできるわけもない。中国・台湾・朝鮮半島とも、日本語に堪能な人々がウジャウジャいる。こちらの情報は筒抜けで、すぐさま翻訳が出される。

 率からいって、日本人の中国語・韓国語レベル、できる人数が圧倒的に劣っている。私たちは、無知の自覚さえない。日本語だけで世界が見通せると思っている人たちに、もっと伝えるべきことはないのか。

 どの隣国にも、日本語がネイティブ並みの通訳・翻訳者がいる。彼らの多くは、苦労して日本語を学習した努力家だ。そして日本人への接客プロだ。だが本当は心の中で、しっかり彼らの立場を持っている。

 多くの場合、はらわたが煮えくり返っても、本音を明かさず、日本人の傲慢な感情に配慮してくれる。日本を相手に仕事をし、生きていく方便であることもあろう。彼らの好意に甘え、彼らの額面どおりの言葉を通じて、隣国を理解できたと思っている日本人がなんと多いことか。

 日本人の感情を損ねずにご機嫌を取る、よき防波堤が通訳・翻訳者か。日本人を、無知のまま眠らせておくことが、通訳・翻訳者の役割だろうか。日本人だからこそ、日本にとって厳しい事実を、勇気を持っていえるのではないか。そんな日本人通訳者・翻訳者がもっと出てくるべきだ。それが本当の愛国心や誇りではないのだろうか。

こんな記事もおすすめです こんな記事もおすすめです
竹島の日竹島の日通訳翻訳と異文化
ドイツ大使館での国歌翻訳ドイツ大使館での国歌翻訳通訳翻訳と異文化
耳だけの語学耳だけの語学通訳業
19歳の日本語通訳19歳の日本語通訳通訳業
通訳の心構え通訳の心構え通訳業



田中 モー子
 http://www.bu-min.com


通訳翻訳ビジネスレポート』メールマガジンで新着情報をお届けします(登録無料)

Powered by まぐまぐ

記事一覧




コラムトップ 記事ボックス 記事を投稿 閲覧の注意 ホームヘ



You are here > Home > 投稿コラム > 記事ボックス > 2005/01/30投稿記事

通訳翻訳館

ホーム新着求人通訳求人翻訳求人求人掲載メルマガコラムブログTwitter館長室広告免責運営
通訳/翻訳のお仕事発見!通訳翻訳サービス提供者発見!通訳翻訳ビジネスレポート翻訳家で選ぶビジネス翻訳書
フリーランスの書架ビジネスセンスを磨く本独立開業のための本仕事獲得のための本キャリアデザインの本
プロフェッショナルの書架通訳者が書いた本翻訳者が書いた本日本語を磨く本異文化を学ぶ本