ドイツ、ミュンヘンで通訳をしている者として投稿します。先日ある旅行会社の依頼で、日本からの技術研修団体の通訳を依頼されました。私は主に研修旅行、技術関連、取引関連の通訳を担当をしています。すでに研修のため、1週間を参加者の方と現地北ドイツに泊り込みで出張、寝泊りから週末のお世話までしてきました。
最近、この種の仕事の依頼が多くなり旅行会社から「先方から英語でもできるか?」という質問があるとの問い合わせがよくきます。その理由を伺いますと「以前添乗通訳に依頼したが、どうも話の内容が合わない、回答に筋が合わないところがある」などで英語ならば依頼主も少しはチェックができるからだそうです。
この原因は依頼主にもあると思います。添乗通訳は多くの場合、観光添乗員で技術研修添乗通訳というのは私の知っている範囲では数少ない方がおやりになっているのみです。また添乗通訳さんは添乗ならできるが技術には興味のない方が多く、その場でやり過ごしてしまえば……という安易な方も多く見うけられます。
通訳の方と、添乗通訳には差があり、案内をできない方も多く、旅行会社は「仕事」と「旅行」に別な方を依頼しなければなりません。しかし、研修団体の皆さんはできれば朝起きてから寝るまで、同じ方がお世話したほうが安心でしょう。計画や行程の相談もその通訳とすべての話が通るわけですし。
さて通訳の話に戻ると、私が以前勤めていた商社のCPU課で経理プログラムを作るために元会計事務所の方を引き抜きました。その方にプログラミングを教え、SOFTとして現実に使えるものができました。通訳でも同じではないでしょうか、研修内容が専門性の高いものの場合、言葉の理解よりも内容に通じている通訳のほうが、満点に近い通訳をすると思います。
そこで資格などの成績だけでなく、専門分野の知識もある程度の評価対象にすべきです。また現地での生活と活動経験が、耳だけの語学ではない知識があるのでその点も加味されるべきです。実際に欧州での通訳は、学問だけではなく実技としての通訳も考慮されています。
話を元に戻すと、旅行通訳は「観光」と「研修」で区別されるべきなのです。また、この種の通訳業務をされている方も「観光」と「研修」の区別を自覚し、信用を落としかねないときは他の方へ仕事を回す勇気も必要でしょう。
話を始めに戻します。今回の通訳では、もちろん旅行の添乗員として食事の通訳、通過地点での簡単な案内通訳もしました。研修目的で、ある関連施設に飛び込みで行き、その場で交渉して見学をさせてもらったり、双方の話す内容を理解してから通訳(事前勉強も含め)したり、必要ならば通訳する単語に説明も加えました。
たとえば、「CAN−BUSを使ってエンジンをコントロ−ル」と単語そのままではなく、もしCAN−BUSの意味が理解できていないことがわかれば、CAN−BUSとは「エンジンコントロ−ル向けに使われる、デジタル信号化されているデーターが載っている回線」であること、エンジンに関連する付属品がこれにつながる可能性もある理由まで説明しないと、単に聞いただけの説明で終わってしまいます。
最後に以前勤めていた音響関連の翻訳で、スピーカーのフレームを業界では「バスケット」と言っています。「当社のバスケットはアルミダイキャストで作られています」という台詞を、「当社の買い物籠はアルミダイキャストでできています」と通訳された添乗通訳の方がいました。確かに、単語としては正しいのですが。
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