最近、中古車販売店が消えていることに気がついた。残っているのは、大手自動車メーカーの正規中古車販売店か、スポーツカーなどの特定車種に特化した専門店だけになっている。だいたい10年くらいかかって、適正量に落ち着いたようだ。
中古車販売店は一気に消えたわけじゃない、1軒ずつ駐車場になり、大型マンションになり、ヤマダ電気に変わっていった。環状8号線は、都心の幹線道路であることもあり、中古車販売店がひしめく激戦区である。いまでは、回転寿司のチェーン店やユニクロなどに変わって、どこまでいっても「中古車だらけ」という風景はなくなっている。
ひと昔まえまで、いたるところに中古車販売店があり、すさまじい価格競争をやっていたのがなつかしい。結局、大手自動車メーカーの正規中古車販売店か、スポーツカーや外車などに特化して「強み」を磨きあげたところしか残らなかった。
消えていった中古車販売店の多くは、価格競争にとらわれ、大事な流れが見えていなかった。「高品質、低価格」もいいが、それをやって生き残れるのは大企業だけだという現実を。こんなことも知らない素人が「商売」をやろうというのだから、どうなるかは簡単だ。
副業感覚、サラリーマン根性で「商売」をやってもうまくいかない。たとえ、まぐれで儲けたとしても、それは長続きしない。なぜなら、「商売」というものは「終わりなき競争」だからだ。
それを知らず、趣味感覚で「商売」をやろうとする人間がいる。無責任な人間たちがばらまいた「儲かる、稼げる」という甘い言葉にのせられ、その気になってしまった人たちだ。
消えていった中古車販売店のオヤジさんたちも同じだ。無責任な人間がばらまいた「儲かる、稼げる」という甘い言葉にのせられ、その気になってしまった。「儲かる、稼げる」という幻想にとりつかれた新規参入者が増えれば、その勢いで過当競争になる。
「ヤツが下げたから、ウチも」という連鎖反応が起こり、根拠のない「高品質、低価格」の大合唱がはじまる。「儲かる、稼げる」という幻を追いかけ、幻にとりつかれているから、心労や疲労がたまって病気になり、命にかかわる病魔に襲われて逝ってしまう。
中古車販売店としては後発だったが、いまでも残っている店がある。店の立地は環状8号線から外れており、「こんなところに」と思えるところにある。この店は、ホンダの「NSX」しか扱わない。常時15台以上を展示し、メンテナンスや独自改造にも対応できる。
ホンダの正規中古車販売店でさえ、これだけやれるところはない。台数を何とかそろえているところでも、独自改造車やレース改造車への対応は全くの「お手上げ」である。
「NSX」は世界初のオールアルミボディー、チタン合金をエンジンにつかった本物のマシンだ。「NSX」のオーナーたちは、ただの車好きじゃない。真っ赤なフェラーリーや原色ポルシェを乗りまわして喜んでいる人間とも違う。
「NSX」を新車で買うことができる人間は、フェラーリーやポルシェも買うことができる。「NSX」を新車で買うオーナーは、独自の改造を施したり、自分のマシンをつくりあげていくことに夢中になる。たとえ、手放すことになっても適当な店に売るはずがない。
だから、価値がわかり、情熱を持ってやっている店にしか質のいい「NSX」は集まらない。しかも「NSX」は中古車であっても、値段はセダンの新車が買えるほど高い。この店は「高品質、低価格」などと言わなくてもいいのである。なぜなら「高品質、低価格」などと叫んでいるものは「NSX」ではなく、「廃車にすべきモノ」だと分かっているからだ。
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